私のアンフォゲ飯 PR

屋久島の大エビフライと家族ごはん

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誰にでも忘れられない味がある。ふとした瞬間に思い出したり、その味と共に記憶がするするとよみがえったり。あなたのunforgettableな味から記憶を整理します。題して私のアンフォゲ飯。

今回アンフォゲ飯を語っていただいたのは、行列のできるインタビュアーとして数多く数の著書を手がけ、家族製本の主宰など、編集者としてさまざまな顔を持つ宮本恵理子さんに、家族にまつわるアンフォゲ飯をお話いただきました。

-- 宮本さんの忘れられない味を教えてください。
宮本 福岡県で生まれ育った子ども時代に、家族旅行先で食べた忘れられない味の話です。私の両親は高校教師で、部活動の顧問をしていたこともあり、いつも忙しくしていました。唯一、夏休み期間は家族旅行に出かけることが出来たのですが、特に記憶に残っているのは、まだ世界遺産に認定される前の屋久島へ旅行したことです。両親のどちらかの知人の方が屋久島にログハウスを持っていて、そこに滞在出来るということで2~3度訪れた記憶があります。

-- 宮本さんがおいくつの頃ですか?
宮本 10歳くらいです。当時福岡から鹿児島まで行き、フェリーで屋久島へ。まだ観光地化されていない当時の屋久島は、子どもだった私が想像以上の大自然を感じる場所。縄文杉も、ログハウスから外に出て見上げた時の満点の星空も、初めての経験でとても思い出深いです。忘れられない味は、その大自然の思い出に混ざって色濃く記憶しています。

屋久島をドライブしている途中にたまたま寄った恐らく道路沿いの定食屋さん。そこで食べたエビフライが忘れられません。なぜ覚えているかというと、エビフライがとにかく大きかったんです。サイズでいうと(記憶上では)30センチくらいありました。子どもの頃から海老が好きでいつもの感覚で頼んだエビフライがとにかく巨大で、でも美味しかったというのをずーっと覚えていました。

-- 30センチ! それはかなりのインパクトですね。尾頭つきだったのかなぁ?
宮本 頭はついていなかったんじゃないかと思います。いや、ついていたかも? とにかく大好きなエビフライがこんなに大きくて、たくさん食べられて、美味しくて大満足だったはず。しっかり食べきりました。
屋久島ではエビが名物だったのかはちゃんと調べたことがありませんが、魚介類は豊富なので、きっとおいしい魚料理がたくさんあるのだと思います。あれ以上のエビフライにはまだ出会えていないです。大人になってから屋久島に行けてないのですが、行ったらまたあのエビフライを食べたいですね。

-- 宮本家の家族旅行はどのようなスタイルでしたか?
宮本 
屋久島には2~3回行っていて、その記憶が濃いですね。熊本の阿蘇や大分の由布院など、主に九州を旅行した記憶があります。でも父は部活の顧問をしていたので、夏休みもなんだかんだと学校に行っていましたから、幼い頃は高校の職員室や校庭で遊んで待っていた記憶のほうが鮮明です。
母が土曜日に学校に行っている時は、父と弟と近くのうどん屋さんに行くのが定番でした。

-- 福岡はうどんも有名ですよね。麺がやわらかいと噂に聞きますが。
宮本 うどんもソウルフードなんです。福岡と言うとラーメンのイメージが強いと思いますが、私は噂通りのコシのないあの福岡のうどんが大好きなんです。
うどんには必ず「かしわめし」がつきます。ごぼう天うどんとかしわめしのセット、これが家族と外で食べるうどんの定番です。

-- うどんは外で食べるもの? 家で調理することもありますよね?
宮本 家でうどんを食べるといえば、わが家は「年越しうどん」でした。近所の「こまどりうどん」さんから、生麺とごぼう天や丸天、えび天なんかを買ってきて、薄い出汁のかけうどんで食べていました。福岡の家庭がすべて年越しはうどんのわけではありません。わが家は、父が蕎麦アレルギーだと思い込んでいた時期が長く(後に調べたらどうやら違ったらしいのですが)、福岡にいた頃は蕎麦を食べる習慣がありませんでした。

-- やはり「家族と食」はつながりが深いですね。宮本家独特のルールのようなものはありましたか?
宮本 
父は高校の国語教師、母は被服科の教師でした。母の手作りの服をよく着ていました。あ、狙ったわけではありませんが今日着ているのも母の手作りです。(※ライトグレーの素敵なジャケットを着てらっしゃいました!)
母が若い頃は、洋服は型紙から作る時代。好きの延長で職業にして、定年まで被服科の教師として勤めました。
父は本が好きで国語教師として長年勤めてきましたので、ルールというわけではありませんが、好きなことを仕事にするという点では、私も両親からそれを継いでいるなと最近になって感じるようになりました。

-- 国語教師のお父様からしたら、娘がものを書く仕事に就いているって嬉しいでしょうね。
宮本 
どうなんでしょう? あ、でもパソコンは買ってもらいましたね。今も私が担当した書籍やインタビュー記事は読んでくれているみたいです。今でもよく「取材先にこの人がいいんじゃないか」と、ためになったコラムやローカルニュースで取り上げられていた人の情報を送ってきてくれたりしますよ。
私が社会に出るタイミングだったでしょうか、茨木のり子さんの『自分の感受性くらい』という詩集を持たせてくれたり、「情報」という言葉の意味を贈ってくれたりしたことはとても印象的です。
「情報」というのは「情に報いる」と書くんだよということは父からもらいました。

-- 「情に報いる」……本当ですね。そう読んだことがありませんでした。
宮本 
「情報」はつい道具のようにドライに取り扱われがちです。特にAIが扱う情報など、時代はどんどんドライに進化していってますよね。だからこそ、読者の期待に応える、発信源の方の思いに応えるなど、情の主体はいろいろありますが、「情報」とは「情に報いること」だとウエットに捉えて意識することは大切だと思いながら仕事をしています。

-- 素敵なメッセージをありがとうございます。家族のための世界で一つの本「家族製本」を手がける宮本さんにご家族の話をうかがうことができて嬉しいです。お皿からはみ出すほどのジャンボなエビフライ、やわらかな福岡うどん、いつか食してみたいです!!

イラスト/Miho Nagai

宮本 恵理子(Eriko Miyamoto)さん

インタビュアー・ライター・編集者 / 「THE IN TERVIEW」講師 / 株式会社コレット 代表取締役

筑波大学国際総合学類卒業後、日経BP勤務を経て、独立。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。経営者の著作を中心にブックライティング実績多数。インタビュー&ライティング講座で講師を務め、家族のための本づくり「家族製本」主宰。著書に、『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』『行列ができるインタビュアーの聞く技術』など。

「THE IN TERVIEW」公式サイト


宮本恵理子さんのご著書

行列のできるインタビュアーの聞く技術
――相手の心をほぐすヒント88

宮本恵理子
ダイヤモンド社/2021年/1,650円(本体1500円+税)






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