アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中かにおら、読者すすめの一冊をご紹介します。
DOG DOGS / エリオット・アーウィット
写真集を買ったのは、たぶん、これが初めてだ。モノクロで撮られたた~くさんの犬たち(少し猫も)の写真がたっぷり。でも、エリオット・アーウィットの
「この本は、犬の写真の本ではなく、写真に写った犬の本なのである」
という言葉からすると、犬の写真集、ではないかもしれないけれど、でもとにかく、犬好きの心をつかんで離さない、自然で飾らない、でもどこかおしゃれな写真たち。街角や公園、カフェなど、世界中ありとあらゆる場所のたくさんの犬たちが登場する。
私が彼を知ったのは、もう何年も前。銀座のベトナム料理屋さんに飾ってあった大きなパネル。木の塀越しに、ラブラドルレトリバーっぽい犬が目から上だけをのぞかせてこちらをのぞき込んでいる写真。この写真がとても気に入って気になった。私、この写真、とても好きだな、と、食事しながらずっと見ていた。こんなことは初めてだった。
なんだかちょっと恥ずかしくて、お店の人に「あの写真は、誰の……?」、と聞くことは出来ず、でも写真の特徴なんかをいろいろ検索したら、有名な写真家で、日本でも写真展を開催したことがある、ということがわかった。残念ながら、もう終わってしまっている情報で、彼も、2023年に亡くなっているのだけれど。
公園のベンチに座る男性の横に、同じように並んで座っている犬。この2人を背中から撮った写真。2人の同じサイズ感がなんだかいい。犬の背中って、語るよね。
車の横にいる犬を撮った写真だが、犬とともに、車のフェンダーミラーにカメラを構える撮影者の彼も写り込んでいる、という面白い写真。
電話ボックスで電話をする飼い主を、たぶん待っているのであろう、扉のまえに、ぴしりとお座りする犬が、まるで飼い主を守っているよう。
家の前に繋がれた犬を、通りがかりの買い物帰りのおばあちゃんが、道すがら撫でている写真。
人が好き、カメラ越しにボク(ワタシ)を見てくれる、あなたが好き、と言わんばかりに、真っすぐな目で、満面の笑顔でこちらを見てくれる犬たち。なんて可愛い存在なんだろう!エリオット・アーウィット氏じゃなくたって、シャッターを切らずにはいられない。
エリオット・アーウィットはプロの写真家で、外出するときはいつも目立たない小さなカメラを持って行き、心に留まったものなどをパシャリパシャリと撮っていた。驚いたことに、取り立てて犬を撮ろうと思っていたわけじゃあないのに、撮ったものを後で見ると、そのほとんどに犬が登場していたという。その犬の圧倒的な多さに、本人ですら驚くくらい。
ほかにもたくさんの写真があって、何回も眺めていると、その時の気分によって、気になる写真が違うのも面白い。
私が気に入ったのはコレだけど、あなたはどれが好き?なんて、友人の感想を聞いてみるのも面白そうだ。