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それもこれもネタ、というか種

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。
栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

なんだかちょうどキリがいい。縁起がいい?
SNSには実に親切な、そして時にお節介な機能があって、
何年か前の今日、何してた?という記事が出てくる。
10年前の昨日、結婚式を挙げた。
入籍は済ましていたので、式と簡単な披露宴だった。
なんだかいろいろ手作りで、いそいそ準備したことは、まぁ、覚えている。

まぁ、覚えているなんて言い方をするには理由がある。
結婚式に関しては、もっとインパクトのある事実が記憶としてあるからだ。
もう何度も話して、すっかりネタとして成熟しているから、私を知る人なら聞いたことがある人も多いかもしれない。

10年前に結婚式を挙げた教会は、今はもう、ない。
今はどころか、その年のうちになくなった。当然ながら披露宴をあげたホテルもない。
結婚式の数ヶ月前だったろうか、ブライダルの担当者から電話があり、ホテルの閉館に伴い結婚式場もクローズすることが決定したとのことだった。

「お客様がそれでも構わないと仰られる場合には、現在ご予約いただいている方のお日にちまではブライダルは対応させていただきます」
という。
予約していた人の中には、縁起が悪いとキャンセルするカップルも当たり前にいたそうだ。
本人たちはよくても親がそう言って別を探すことになった人もいたらしい。
まあ、そりゃあそうだよね。若いカップルなら特にそうだし、お金を出してくれる人には言う権利もあるよね。などと、ずいぶん冷静に話した覚えがある。

私たちは決行することを決めた。場所が都合が良かったこともあり、
別を探す気力もあまりなかったのかもしれない。

滞りなく式も披露宴も終えることが出来、その年の暮れだったろうか。
地元の大型ショッピングセンターの中の映画館へ映画を観に行ったときのこと。
そこは私たちが結婚式を挙げたチャペルがあった場所の隣である。
駅からの無料送迎バスを降りて、私たちは気づいた。

ない。見事にない。チャペルやホテルがあった場所は更地になっていたのだ。
そのまっさら感に大笑いした。
ここまで跡形もないとむしろ清々しいね、と。
ちなみにその更地は、ほどなくしてショッピングセンターの
第6だか第7だかの駐車場になって今もある。

ホテルにはアニバーサリープランなんていうものがあって、結婚何周年の時にはあの頃を振り返りつつお食事をしたり、宿泊をしたりするらしい。
そんなスイートなギフトは、その年のうちに存在しなくなったけれど、
私はとっておきのネタを手に入れた。
10年たっても錆びることはなく、いつでも話の種になってくれる。

よく、「人生の棚卸し」の大切さを講演やセミナーで聞くことがある。
私は棚に押し込めている記憶も、きちんと束ねて収納している事柄も大してない。
それは、たぶん、それもこれもネタにして話の種にしているからなのかなとも思う。
言ってみれば、引っ掛け収納くらいなものだ。

そんな調子のクリッセイ、よろしければたまに覗きにいらしてください。