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「んもぅ~~っ!!」とヤツの後ろ姿

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

桜の開花宣言が出た後の休日。晴天の上野は、まるでカーニバルだった。
人、人、人。お店の呼び込みも活気があって、日本人以外の観光客もたくさんいて、
あちらこちらで列や人だかりが出来ている。

友人とゆっくりランチをした後、お店を変えてお茶をしようということになった。
わかっている。カフェ難民になることくらい。
時刻は16時頃だったろうか。考えることは皆、同じだもの。
のぞく店ごとに、店先に人が溜まっていて「ここもダメだろう」「あぁ、この店は無理だね」となった。

そして激混みのエリアからほんの少しだけ離れたビルの2階の某ファミリーレストランにたどり着いた。
入口から20以上の丸椅子がずらりと並んでいる。
前には10人以上いただろうか。でも、なんとなく回転率が良さそうだったので、大人しく並ぶと、少しして列がどんどん進み、席に通された。
店員さんの無駄のない動きがそれを可能にしていた。それにしてもこの繁盛ぶり。「いくら時給をもらっても割に合わないだろうね」と友人と笑った。

通されたスペースは、メインフロアからグッと奥に入り込んだ天井の低いスペースだった。
外国人の8人組が1組、若い男女3人組が1組、そのほかに小さいお子さんがいる2組がいた。

小さなスイーツとドリンクバーを頼み、気兼ねなくおしゃべりを続けた。
お席は90分制とのことだ。

最近ではもうまったく珍しくもなくなった、配膳ロボットがこの店でも仕事をしていた。
料理を乗せて座席近くに進むも、ベビーカーが置いてあったり、進路がスムーズでないと、なかなかうまく作動しない。
私たちの座席はそのスペースの中では手前に位置していたので、遠慮がちに手前で停まる配膳ロボットをあらあらという感じで見ていた。


ものすごい回転率のこの店では、当然、店員さんの手運びもある。
私たちの頼んだデザートはさっさと店員さんが運んできてくれた。
しばらくして、テキパキと動く店員さんが、4枚のお皿に乗った料理を運んできた。
届けるのは一番奥のテーブルのようだ。しかし、手前には所在無げな配膳ロボットが、
帰るに帰れない風でとどまっていた。
ヤツのせいで、店員さんが通れない。
友人が隙間を作って、そこを通した。
まだ立ち往生しているヤツのリセットボタン(ホームへ戻る)を押して、ようやくノロノロと動き出した。

小柄な女性店員さんが、思わずロボットを叩いた。
声は出ていなかったけれど、私たちには彼女から「んもぅ~~っ!!」という吹き出しが見えた気がした。
これが新人バイトさんだったら、パワハラで一発退場みたいな話だが、
相手は配膳ロボット。そしてこの激混み。助けてくれるのかと思いきや、アンタのせいで……という状態なわけで、むしろ叩きたくなる気持ちが痛いほどわかる。

彼女がユーモアを持ってそれをしたのか、怒りにまかせて思わず出たのかはわからないけれど、私と友人は笑って「あれは仕方ないよね」と言った。
おそらく彼女の顔のほうがよっぽどロボットのように無表情だったろうから。
(あ、イマドキのロボットは表情も豊かだったりするけれど)

向きを変え、元の位置に戻っていく配膳ロボットは、途中から加速した。
怒られて、反省して、小走りで戻っていく感じに見えて、また少し笑ってしまった。

怒られて、反省して、小走りで戻っているように見えたのは、私たちがそのようなことを経験したことがあるからなわけで、
やがて、怒られもせず、反省は必要なく、小走りで戻ったことのない人が主流になったら、
あのロボットの後ろ姿を見ても笑わなくなる未来が来るのかなぁ。
いや、もう来ているのかもしれないよ。「んもぅ~~っ!!」