理由あって週イチ義母宅 PR

白が散る

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理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。

春を感じる天気のいい日。いつものように義母宅に着くと、玄関の扉が開かれ、
洗濯機が動いている音がする。
義母は洗濯機の前にいた。
義母宅の洗濯機は、車庫にある。今も現役の2層式。

「来たよ~」と声を掛けながら、洗濯機の音に少し違和感を感じる。
あ、あ、あれだな。
脱水を止めてもらい、蓋をあけると、案の定、あれだった。
紙パンツも一緒に洗ってしまうやつ。

高性能の紙パンツ&尿とりパッドのおかけで、義母はおおよそ清潔に暮らすことが出来ている。
しかし、これを水に入れてしまうとものすごい吸水力を発揮し、
それを脱水にかけてしまうと、中のゼリーが脱水層の中で見事に散らばる。

あと15分待ってくれれば、私が洗濯したのにぃ。
でも天気はいいし、私がこれから行くよと駅から電話をしたことで、
義母のきれいにしましょうスイッチがきっと入ったに違いない。

グチグチを小声で言いつつ、「でも洗濯してくれようとしたんだね」と言葉にする。

それにしても今日に限って、ずいぶんと洗濯物もたくさん入れたわね。
脱水層のゼリーを義母にかき出してもらっている間に、
一旦洋服を外に出すと、ご覧のとおりだ。
スウェットには白い紙片が無数につき、靴下も表裏ともにびっしり。
それらをバサッと振ると、車庫はまるで真っ白な粉雪が散ったかのようだ。

応急処置的なことをしつつ、
「これ、洗っちゃうとこうなるでしょ、詰まって洗濯機壊れちゃうかもしれないんだよ」
「そうだよー」
無邪気かつ、ちょっと上からの返答が来るのもいつものことだ。
「そうなのー?」じゃなくて、「そうだよー」なんだよね。グチグチグチ……。

一段落ついたところで、気を取り直して昼食の時間になった。
私にとっては、面倒の先送り、義母にとってはなかったことになる。

午後、義母の髪がかなり伸びて、アインシュタインのような髪型になっていたため、
近所のスーパーの中にある1000円カットに行こうと誘った。
天気が良かったからか、快諾してくれた。

コロナの感染予防対策で、最近は1000円カットの店内に付き添いは入れない。
施術椅子に座るのを確認して、耳まで出してバッサリ、さっぱりお願いしますとオーダーを出したところで、
私はスーパーでの買い出しに店内へ。
自分で動きながら、早回ししているみたいだった。
今日なら買い物競争に勝てるかもしれない。

会計を終えて1000円カット店に戻ると、間もなく義母のカットが終わった。
さっぱり&きょとんとした顔をした義母の足下には、
カットした真っ白な髪の毛が散っていた。

スーパーからの帰りは荷物が重くてクタクタ
地元に戻って、駅からの自転車も進みが遅いほどクタクタだ。
でも風が吹くと、白い沈丁花の香りがマスク越しに届いた。
大好きな春の香りだ。
沈丁花の白い花が散っていなくてよかった。素直にそう思えた。