理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。
ここ最近の私といえば、義母に穏やかに過ごしてもらうことをミッションとしている。
という話はここ最近続いている。
大雨予報の今日は、車で義母宅を訪れた。
早めに買い出しを済ませ、カラフルな弁当を購入して、昼より少し前に到着した。
テーブルに出した弁当を見て「色がきれいだね」と義母が言った。
鶏の黒酢弁当には、パプリカの赤やカボチャの黄色、インゲンの緑が入っていて
義母の言う通り、色がきれいだ。
「ホントだね、色がきれいだと食欲が湧くね」
記憶を遡っても私たち2人に食欲が湧かなかった昼はこの2~3年ない。
この点に置いて、義母と私はとても相性がいいのだろう。
「今日は美味しそうに食べるね」と私。
「そう?」と義母。
「うん、いつもはあんまり美味しそうな顔して食べないのに、今日は笑顔でとっても美味しそうないい顔で食べてるよ」と私。
「今日はお腹がすいてたから」と義母。
いつもはあんまり美味しそうな顔して食べないのに……と言える暴言ちょい手前の自分を棚に上げ、
今日はお腹がすいていた……と言う義母も棚に上げる。
両方棚に上げて、
「やっぱり一緒に食べると美味しいよね。私はお昼ご飯を一人で食べることも結構多いけど、一人だとつまらないから、すぐに食べ終わっちゃって美味しくないんだよね。
こうやっておしゃべりしながら食べるのは楽しいし、美味しいね」
と言った。
このセリフには5つの真実と1つの嘘がある。
一緒に食べると美味しいは真実。
お昼ご飯を一人で食べることが結構多いも真実。
一人だとつまらないもまあ真実。
すぐに食べ終わっちゃうというのは確かな真実。
美味しくないんだよね、は嘘。
もちろん、おしゃべりしながら食べるのは楽しいは真実。
「そうだね」
私の5つの真実と1つの嘘にはさほど興味はなさそうに、義母は相槌を打った。
美味しく食べきって、いい流れのまま、昼の薬を出した。昼は漢方を1包のみ。
どちらかといえば私たちの気休め、みたいなところはある。
もちろん、医師の処方を受けているものなのだが。
飲み方を身振り手振りでサポートする。
「全部?」と聞くから
「全部だよ、ガンバレ!」
そう言って、漢方薬を飲む義母を見守った。
自力で薬が飲めるのだからもうそれだけでありがたい。
「飲んだ?」と私。
「飲んだよ」と義母。
くるくるっと袋をまるめて捨てようとするところを確認したら、
半分残していた。
義母のついたライトな嘘を、私が残りの薬を飲むみたいに飲み込み、昼食時間を終えた。
さあ、洗濯に出かけよう。
「これから洗濯に行ってくるよ。帰ってくるのは〇時くらいになるけどいい?
外は雨だから家の中にいてね。〇時頃戻ってきたら、一緒におやつを食べようね」
私がそう声かけすると、義母は
「また美味しいもの買ってきてくれるの?」と明るい声で言った。
「うん、実はもう買ってあるの。でもいない間にお義母さんが一人で食べちゃわないように、わからないところに置いてるの」笑いながら、そう言ってみた。
「それがいいよ!」義母はそう言いながら笑った。
今日のおやつは「おはぎ」だ。
雨に揺れるまんまるな紫陽花をみながら、義母の嬉しそうな顔と、おはぎのフォルムが重なった。