理由あって週イチ義母宅に通っていた。
これは、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、ちょっとしたホントの話だ。
そして理由あって月イチ施設訪問のコーナーになったので、何か面白いことや発見があったら綴ってみたいと思う。
どら焼きを持参した。たしか先月は芋菓子、その前はどら焼きが購入できず、柏餅を持参したが、やはりどら焼きの威力は絶大だった。
義母が暮らす部屋に入室すると、体の大きな私たちと車椅子に座る小さな義母とは目線が合わない。声をかけてもすぐには私たちを認識できないのは仕方のないことだ。1カ月ぶりだもの。
反対にいつもサポートしてくれている施設の職員さんが大きくはっきりした声で名前を呼ぶと、ふっと顔をあげ、その方を見てニッコリした。
ふと寂しいような気持ちになるかなと思ったけれど、それ以上にこの施設や職員さんに馴染めている証拠だと思い、嬉しくなった。
そしてここから義母と夫と私の約30分の面会タイム。
今日は仕入れる(と言っても最寄りのセブンイレブンで購入)ことが出来たどら焼きを目の前に出して、「どら焼き食べる?」とたずねた。
「うわぁ~っ!!」と興奮するように反応した義母。車椅子から立ち上がれるのでは?
というほどのリアクションの良さに、予想はしていたものの、私たちも興奮してしまう。
義母のどら焼き好きは、国民的スーパースター『ドラえもん』を超えた気がする。
夫が手渡すと、すぐさま開けるのを試みた。
開けにくくても、果敢に開けようとその手を動かしつづける。
「できる?」と聞くと「出来るよ」とこれまた即答。
こうなると私はひたすらにニヤニヤしながらその様子を見るばかりである。
なんでも一人でやって来た義母である。一人で頑張り過ぎたよな……と思うことすらあったけど、今、生活のサポートは大幅に周りに頼るようになって、それでもなお、どら焼きは自分の手で開けようと踏ん張れるのだ。
時間をかけて、少しサポートもしつつ、中身を取り出すことができたどら焼きを「ほら!」と自慢げに私たちに見せた。
そしていざ食べる段階になると、私たちを差し置いて食べていいのか少しためらった。
「大丈夫だよ、僕たちの分もあるから」と、もう一つ買っておいたどら焼きを義母に見せた。
安心すると義母は、その手に持ったどら焼きをそれはそれは美味しそうに食べた。
小さなペットボトルのお茶も前回は飲み方がわからずとまどっていたが、この日はしっかりボトルを握り小さく一口飲むことができた。
これを「どらやきっかけ」という。(イワナイ)
でもなにか好きなものがきっかけとなって力が湧く、やる気になるというのは、誰にでもありそうだし、できそうだな。
「すきやきっかけ」とか「おこのみやきっかけ」とか?
「ときめきっかけ」とか「かんれきっかけ」とかもアリだね。
義母の笑顔のきっかけは、どら焼きだと把握している私たちは、
その日、帰宅後に残りのどら焼き1個を半分ずつ食べた。