理由あって週イチ義母宅に通っていた。
これは、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、ちょっとしたホントの話だ。
1年ぶりの更新だ。月イチの施設面会はその後も続いている。
どら焼きの差し入れももちろん続いている。変わったことと言えば、一緒に私たちの分を買うことはなくなったことだろうか。
義母は私たちが食べる食べないは関係ないことがわかったからだ(笑)。
義母が暮らす施設の3階のお部屋に入ると、大抵、共有スペースの同じ場所にいる。その向かいには大抵、笑顔の女性がいる。とても面倒見がいい方で、私たちが行くと「ほら、来てくれたよ、よかったね」と義母に声掛けしてくれたり、「歌がとってもうまいのよ」と私たちに報告したりしてくれる。歌好きで通ってるとはちょっと驚きなのだけれど、声がよく出るのかもしれない。
この日は洋服を数枚差し入れした。前回、だいぶくたびれていた感じのものを引き取ってきていたので、1カ月ぶりの「1 OUT 1 IN」である。
施設では、入所者の尊厳を大切にし、衛生面的にも気を配ることを大切にしてくれているので、家族は状況を見ながらこうした差し入れをするのだ。
施設は温度管理も徹底しているので、夏場でも母に差し入れるのは長袖シャツ。案外かわいい色やスポーティーなものも似合うので、そんなことも意識して購入した。
この日の義母はご機嫌で、よくおしゃべりしてくれた。
残念ながら言葉はほとんどよく聞き取れないし、会話にはならない。
でも相槌を打つと、テンポよく話を続けくれるので、わからないなりに会話時間は作れる。
これはもしかしたら、それなりに手にした特殊技能かもしれない。
技能と言えば、面会を終えてそろそろ帰るというタイミングで施設の職員さんが私たちに言った。
「これ、見てください!」
これ、とは個室を出てすぐの壁にあった献立表だ。
マグネットプレートにメニュー名が書かれている。日付は翌日のものになっていた。
「このメニュー書きを、いつも〇〇さんが担当してくれているんです。明日のももう書いてもらいました」
とても嬉しそうに私たち家族に報告してくれる職員さんの想いが嬉しかった。
想像以上にしっかりとした文字だったのも、もちろん嬉しい。
「やっぱり長年、黒板に文字を書いていたから、得意なんだと思います!」と言うと、
「そうですよね、先生だったんですよね」と職員さん。
この日の職員さんは、たぶん私たちははじめましての方だったが、情報が共有されていて、しっかり義母の得意なこと、出来ること、やりがいを大切にしてくださっているんだなぁとわかり、しみじみ。
ありがたい気持ちでいっぱいになりながら、義母に手を振って施設の部屋を後にした。
受付で入所時から担当してくださっているスタッフさんともお会いでき、今日の面会はとても元気におしゃべりしてくれたこと、献立ボードのことを報告いただいたことにも感謝を告げた。
元気なことはいいことだけれど、そういう時は立ち上がろうとしてしまうとか、事故が起こりやすいという心配もあるそうだ。プロはあらゆる状況を見ながら対処してくれているという事実にまた頭が下がる。
帰りの車の中で、「いい施設に入れたよね」と何度だって言う。
そして、献立ボードのことを振り返りながら私が言う。
「やっぱり、週イチで通って作り置きおかずを作って、料理名を付箋に書いてもらってた、あの習慣がよかったんじゃない? 毎週、よく通ってたよねー」
夫婦ともによくやっていたと、自分を持ち上げるコメントも、そう、何度だって言うんだ!
