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左手を見つめた_LIVE『Akino Sara Solo Live -サラの世界-』

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3月1日(土)、六本木CLAPSで行われた『Akino Sara Solo Live -サラの世界-』をレポート。

秋野紗良というアーティストをなんと表現したらいいのか、難しい。
例えば……と書こうと思ったけれど、どれも収まらないような気がするのでここではやめておく。

開演前の客席はたぶんもう何度も彼女の歌声に魅了されてきた人たちでリラックスしているようにみえた。
LIVEの前に食事やドリンクを楽しむスタイルであることももちろん影響している。
私は紗良さんの歌声を生で聴くのは、3度目だった。

山本貴仁さんのドラムソロからLIVEは始まった。
日中は気温が上がり、春が来たことを誰もが実感して少し体の強張りが緩んだ日だったから、いきなり大地を感じる音の力強さを受け取れる気がした。
ベースは蛇石徹さん、ピアノは松本俊行さん、ここにヴァイオリンの会田桃子さんが加わり、「サラの世界」が始まった。

紗良ではなく、「サラの世界」だったな。どんな世界だったか、あまり順番にとらわれず思い出してみよう。

「♪海」「♪空へ」
紗良さんの歌には、本当にたくさんの自然が出てくる。ご自身がそれを愛している自覚があって、大切だと思えるものを歌いたいんだなぁと嫌味なく伝わる。嫌味なくなんて意地悪い言い方だが、そう思った。
ステージの背景は、シンプルなスクリーンで、曲によって色が変わったけれど、海を歌えば海が、空を歌えば空が見えた。

マイクを持つ手は右、反対の左手につい目がいった。曲に入る瞬間にその左手がとても敏感なセンサーみたいに振動とかメロディーとかを捉えているように見えるのだ。指先を細かく動かしたり、腕を大きく広げたり、高く掲げたり、一曲の中でもさまざまな動きを見せるけれど、そのセンサーみたいな左腕は、音と声と何かをつないでいる感じ。
言葉にすると少し怪しくなってしまうけど、でもそういう感じ。
そして歌声は、観客の涙腺ともリンクしていて、聞きながらツーッと涙が落ちたりしてしまう。あのセンサーみたいな左腕と、歌声とハートと涙腺がつながっていて、たぶん体が喜んでいるなぁみたいな感じ。
うん、やっぱり言葉にすると少し怪しくなってしまうのだけど、でもそういう感じ。

MCで、大好きな春の香り、沈丁花が香りはじめましたね、と言っていた。
私はまだ今年はその香りに出会えていないけれど、毎年同じ気持ちになるので嬉しくなった。
香りで季節を感じられるって、なんかギフトのようで嬉しいけれど、大抵は一人で出かけた先や夜の帰り道で「あっ!」って気づいたりするので、今年は先に共感をもらえて得した気分になった。

「♪Starfly」は、はじまりと終わりにドラムの山本さん、ヴァイオリンの会田さんが演奏とともにコーラスもされた。
その響きが本当に美しくてバランスが良くて、なんというかきれいに折りたたんであるお気に入りの服を出して、着て、またきれいに折りたたんでしまう、みたいな気持ち良さ。
いや、無理に収納っぽいことを言う必要もないのだけれど、そんな気持ちになった。
「航空関係の方、ぜひテーマソングにご検討ください……」と、ちょっと照れながら言う紗良さんを見たのは2度目だけれど、「いや、本当にマジで!!」と今回は心の中の私もつぶやいた。

数多くの舞台、LIVEで活躍されているヴァイオリニスト会田桃子さんは、オリジナル曲の「♪波止場」と「♪リベルタンゴ」を披露。ステージ脇、ピアノの横で珠玉のヴァイオリンが奏でるタンゴの音色にじっとなんてしていられなくて体を揺らしていた紗良さんがチャーミングで、私には紗良さんのそばに「音楽ってこういうこと!」というハッピーな吹き出しが見えた、ような気がした。

「♪踊り続けて影になる」「♪おたずねしたいのです」など、歌声に力がぎゅっとこもっていたし、ご自身も出演されたという2019年のミュージカル『幸せな時間』で主演の尾藤イサオさんが歌った曲、「♪一生懸命生きなさい」は、実はちょっとハッとなってしまった。

アンコールに応え、幸せそうにもっと歌いたいオーラを放つ紗良さんが、この日のライブで何度か口にしたのが「あの手この手で、世界を幸せにしたい」という言葉だった。
この日のライブに限らず、いつもきっとそう思っているし、そう口にしているのだろう。
あの手、この手の一番手で、きっとほぼすべてを指すのが、「歌うこと」なのだということは、この日、ライブ会場にいた皆が知っている。
あの手この手と聞く度に、私は彼女のセンサーみたいな左手をみて、小さく頷いていた。

最後に……。
ライブのMCの中で、紗良さんがこのウェブマガジンの「私のアンフォゲ飯」についてお話してくれたことに、ひたすらに感動した。
コーナー趣旨も完璧に(というか、私より上手に)説明してくださり、隣に座っていた方が「へぇー」と興味深そうに聞いて声を漏らしていたのを私の耳は聞き逃さなかった。
読んでくださっていたら嬉しいなぁ。

歌にもなった、パパのみそおにぎり誰にでも忘れられない味がある。ふとした瞬間に思い出したり、その味と共に記憶がするするとよみがえったり。unforgettableな味から記憶を整理する私のアンフォゲ飯。 今回は歌手の秋野紗良さんの忘れられない味。歌手をめざすきっかけになったお父様との大切な思い出をお話いただきました。...

ライブが終わり、途中で追加注文したパフェを、一緒にライブに行ったMihoさんと少しスピードアップしながら二人で食べた。
パンナコッタとベリーとブラウニーの組み合わせは、
優しく広がるメロディーとチャーミングなMCと力強い歌声が組み合わさった今日のライブ「サラの世界」みたいだった。

東京マラソン前夜でインフィニティ・ダイヤモンドヴェールに点灯していた東京タワー

『Akino Sara Solo Live -サラの世界-』

日時/2025年3月1日(土)
会場/六本木クラップス
出演/秋野紗良(Vo.)
   松本俊行(Pf.)
蛇石徹(Ba.)
山本貴仁(Dr.)
会田桃子(Vn.)

http://akinosara.jp/

 

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