キニナル PR

中井智彦さんアルバムリリース記念インタビュー~鉄道にはたくさんの人生物語が詰まっている~

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

気になるプロダクトやプロジェクトをエンタメ性や整理収納の考え方に寄り添いながら紹介し、読者の「キニナル」を刺激します。

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』や『ナイツ・テイル-騎士物語-』など、数々の舞台作品に出演するミュージカル俳優の中井智彦さんが、コンセプトアルバム「Railway Story」をリリース。大好きな「鉄道」をテーマに、名曲を歌い集めた最新作について、深掘りインタビューしました。

大好きな鉄道と
距離をとっている時代があった

-- 舞台関係者の皆さんの中では、中井さんの鉄道好きは有名とうかがっています。幼い頃からずっと「鉄道好き」だったのですか?
中井 
昔から鉄道が好きでした。でも実は大人になってから復活させた趣味ではあるんです。というのも、若い頃は趣味と仕事を一致させてはいけないのではないかという思いを抱いていたからです。そのため、歌を学び始めた10代後半から20代は、音楽に集中するためにあえて「鉄道好き」には蓋をして、距離をとっていました。好きを二つ抱えられないタイプだったんです。
27~8歳の頃、ふたたび趣味として向き合い始めたのがNゲージ(鉄道模型)でした。好きな車輛を机に並べてそれを眺めるだけで幸せになれました。そのうち休みが出来たら、好きな電車に乗りに行くということが楽しみになって、趣味と仕事って両立できるんだと実感するようになったんです。

-- 今回制作された「鉄道」をテーマにしたコンセプトアルバム、どのような経緯で制作されることになったのでしょうか。
中井 
劇団四季を退団後、2020年には、念願だった大好きなミュージカルソングを集めたCD「I Live Musical!」を、2022年には自分の人生に影響を与えてくれたJ-POPとオリジナルソングを収録した「Singer Song Actor」を発表。さあ次は何を作ろうかという話になった時に、いよいよ大好きな「鉄道」をテーマにしてみては? という話が出ました。
仕事と趣味を兼ねていいのかと迷っていた時期もありましたが、出来上がった今、とても満足度の高い作品になりました。

ブルーハーツ、イルカ、
ユーミン、槇原敬之、歌い継がれる名曲たち

-- 選曲がどれもとても魅力的です。鉄道に関する歌詞が出てくる名曲はたくさんありますが、どのように選ばれたのか、ぜひ1曲ずつ解説をお聞かせください。
中井 
「TRAIN-TRAIN」は僕自身がすごく影響を受けた曲です。これは心の中に見えている列車だという気がしていて、「走って行け」なのか「走って行く」なのか、とにかくTHE BLUE HEARTSの歌うこの歌詞が若い頃の自分に突き刺さりまくりました。初めは電車が好きだからタイトルに反応して聞き始めましたが、パンクやロックの中にやさしさやもどかしさがこんなにも詰まっている曲なんだと。
僕は中原中也という詩人が大好きなんですが、THE BLUE HEARTSは中也の世界観にも重なるところがある気がしているんです。
鉄道、電車、列車、いろいろな呼び方がありますが、時代とともに変わってきているのがまた「鉄道」の魅力です。次は汽車を歌いたいということで、「なごり雪」を選曲しました。
これは僕の母が好きな曲で、家でもよく流れていたのですが、当時から、この曲を僕が歌うならどう歌うだろうと思いながら聴いていて、没入しやすい曲でした。

-- カバーされる機会が多く、歌い継がれている曲も収録されていますね。「なごり雪」から「卒業写真」へのつながり、その間というか流れがとても印象的でした。
中井 1曲1曲の間もすごく繊細に調整しました。時代と逆行していると言われるかもしれませんが、このアルバムは1曲目から順に聴いて欲しいんです。「卒業写真」は揺れる柳の下を通る通学路、それを電車から見るというシチュエーションです。この曲はピアノとアレンジを担当してくれている長濱司君とライブで演奏したことも何度かあって、彼の持ち味であるジャズのアレンジを加えたバージョンです。歌っているだけで気持ちいいメロディーラインだと感じるのはさすがユーミンだなと思います。
「遠く遠く」には新幹線のホームが出てきます。都会に出て来た人が今は元の場所には帰れないという……「わかるっ!」という歌詞ですよね。この曲もたくさんの方がカバーされていますが、中井智彦ならどう歌うか、実はトライ&エラーを一番重ねた曲でした。どうしても槇原敬之さんの世界観になってしまう楽曲の強さがある。加えて槇原さんの声はアンニュイで唯一無二、僕の声は槇原さんの声とは正反対の説明したがりの声なんです(笑)。だからこの曲の物語、登場人物たちを完全に頭の中に作りこんでレコーディングしました。長濱君のアレンジにもしっかりと背中を押されて、中井智彦らしい世界観の曲に仕上がりました。

-- 最後はオリジナル曲の「駅」ですね。詞と曲はどちらが先だったのでしょうか。
中井 こうして曲を集めていくといつのまにか、電車や汽車やホームを見る駅目線が産まれていて、それで書いたのがラストのオリジナル曲「駅」なんです。ここにたどり着いた感覚は面白かったです。曲を作る時、いつもは詞を先に書いて長濱君に渡すのですが、今回はあえて逆にしてみました。届いた参考メロディーは夜行列車を思うような音でした。僕はブルートレインが大好きなので、夜行列車に乗っている少しセンチメンタルな雰囲気がとてもいいなと思って、そこに向けて詞を書きました。書いては直してを繰り返した末の駅目線、このアルバムの総括にもなっています。このアルバムはやはり1曲目の「Prologue」から順番通りに聴いていただけると嬉しいです。「Railway Story」の約25分を僕にくださいという感じです。

ブルートレインには
もう一度乗りたかった

-- 中井さんの鉄道愛についてもうかがっていきたいです。中井さんはずはり何鉄?
中井 僕は「乗り鉄」です。公言していないだけで、実は鉄道好きの方って結構いますよね。でも鉄道と触れ合う機会って一人の時が多い気がして、自分だけで楽しむ世界だと感じてきました。
小学校低学年の頃、ブルートレインに乗ったのが一番の思い出です。東京から長崎までの走行だったんですが、一睡もしませんでした。深夜2時にラウンジカーに行って座ってみると、中が明るいから外が見えないんです。それを手で影をつくってなんとか外の景色を見ようとしてみたり、こんな時間にラウンジカーに現れる人ってどんな大人なんだろうと観察したり。深夜に通過する大阪駅や広島駅の、ほとんど人がいない駅舎を見ては興奮して、大人の階段を登った感覚でした。

-- このエピソードだけで1曲、曲が出来そうですね!
中井 
このわくわくした体験は作曲の長濱君に話したことがあったので、それもあってあのオリジナル曲が生まれたといえるかもしれません。さきほどお話したように、鉄道と少し距離を置いている間に、ブルートレインは廃止となってしまいました。もう一度ブルートレインに乗りたかった! という思いは残念ながら実現しなかったんです。

-- 鉄道を通じた人とのつながりなど、何か印象深い思い出はありますか?
中井 
兵庫県に歌の仕事で訪れていた頃に、電車の運転士をされていたというご年配の方と知り合いました。時代の流れとともに、機関車、気動車、電車をすべて運転してきたそうで、なかでも一番面白かったのは機関車だったという話を聞かせてくれました。機関車はその日その日で機嫌が違うので、石炭のくべ方、蒸気のあげ方など対話をしている感覚だったそうなんです。人とモノが向き合ってコトを動かしている感じがして、なんて尊いんだろうと。これって自分が音楽と向き合って曲や作品を生み出すことと共通しているなぁという気がしたんです。運転士さんから話をうかがった時、涙が出るほど感動しました。

-- 鉄道への思いを込めた「Railway Story」の世界を堪能できるLIVEも予定されているんですよね?
中井 
11月16日に目黒のBLUES ALLEY JAPANでコンセプトライブを開催します。アルバムの世界観をより立体的に感じていただけるようなライブになります。この中で、曲に合わせて書いた散文詩を読んで、歌を聴いていただく、そんな構成を予定しています。

-- CDに封入されている歌詞カードに掲載されている詩ですね。では改めて、このアルバムをどのような方に届けたいですか。
中井 
鉄道には人との暮らし、人生が詰まっていると思います。満員の通勤電車にもいろいろな人の人生が詰まっていて、それを毎日のように運んでいるんだと考えると、電車って物語の宝庫だと思うんです。だから、鉄道好きな方はもちろん、たくさんの方に聴いていただきたい。実は僕自身、電車移動の時にこのアルバムを聴いているんですけど、最高ですよ!! ぜひ電車に乗りながら聴いて欲しい。
聴き馴染のある有名な曲ばかりですが、「鉄道」というテーマでくくったことによって新しい歌物語を感じていただけると思います。鉄道を通して人と人とが触れ合うあたたかさも感じられるアルバムになりました。ぜひたくさんの方に聴いていただけると嬉しいです。

-- 鉄道愛と名曲への思いにあふれるお話の数々をありがとうございました。

コンセプトアルバム「Railway Story」

収録曲︓
01.「Prologue」 - インストゥルメンタル (作曲: ⻑濱司)
02.「TRAIN-TRAIN」 - THE BLUE HEARTS
03.「なごり雪」 - イルカ
04.「卒業写真」 - 松任⾕由実
05.「遠く遠く」 - 槇原敬之
06.「駅」 - 中井智彦 (作詞: 中井智彦 / 作曲: ⻑濱司)

歌︓中井智彦/ピアノ&アレンジ︓⻑濱司
写真︓中井智彦
発売⽇︓2024 年 9 ⽉ 4 ⽇(⽔)
価格︓¥3,000(税込)
ブックレットには中井智彦による散⽂詩が掲載
レーベール︓upcoming 品番︓UPNTCD0013
店頭、ライブ会場での販売のほか、主要な⾳楽配信サイトにて

中井智彦 Concept LIVE 2024「Railway Story」

⽇時︓2024 年 11 ⽉ 16 ⽇(⼟)17 時開場/18 時開演予定
会場︓BLUES ALLEY JAPAN(東京) 〒153-0063 東京都⽬⿊区⽬⿊1丁⽬3­14
出演︓中井智彦/⻑濱司(Piano)/⼯藤誠也 (Drums)
※公演内容・チケットなどの詳細は、中井智彦オフィシャルウェブサイト https://www.nakaitomohiko.jp

中井 智彦 (NAKAI TOMOHIKO)歌⼿・俳優・表現者

1983 年 9 ⽉ 2 ⽇⽣まれ/神奈川県出⾝。
東京藝術⼤学卒業。卒業時に同声会賞を受賞。2007 年『レ・ミゼラブル』で初舞台。2010 年から 5 年間、劇団四季に所属。『美⼥と野獣』(野獣役)と『オペラ座の怪⼈』(ラウル役)はそれぞれ約 500 ステージをつとめる。艶のあるバリトンを持ち味にミュージカルや歌⼿活動をはじめ、最近はラジオ番組のパーソナリティなど活躍の場を広げている。
近年の舞台出演作は『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』(トニー役)、『ナイツ・テイル -騎⼠物語-』(ピリソス役/歌唱指導)、『ジェーン・エア』(シンジュン役/歌唱指導)、『ムーラン・ルージュ︕ザ・ミュージカル』(サンティアゴ役)など。
劇団四季在団中に図書館で偶然⼿にした『中原中也全集』に深く感銘を受け、中也の感じた藝術を形にしようと舞台の創作を開始。16'年に企画構成・作曲・演出を⾃ら⼿がける独り舞台『詩⼈・中原中也の世界』を、22 年に『ワタシノコト』を発表。以降もブラッシュアップを重ねながら公演創作を続けている。サラブライトマン⽇本ツアーにバックコーラスとして参加。NHK「名曲アルバム」にて「おやすみアイリーン」歌唱。

◎今後の舞台
2025 年 1 ⽉〜ミュージカル「ミセン」

オフィシャルサイト&ファンクラブ「ブルートレイン なかい号」

 ※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。