私のアンフォゲ飯 PR

国境を越えたら食べないインジェラの味

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誰にでも忘れられない味がある。ふとした瞬間に思い出したり、その味と共に記憶がするするとよみがえったり。あなたのunforgettableな味から記憶を整理します。題して私のアンフォゲ飯。

今回アンフォゲ飯を語っていただいたのは、世界100カ国を旅し、17年間フィジーに暮らした余白探究家、『余白をつくる練習』(幻冬舎plus+)など著書も多数の永崎裕麻さん。旅で出会った忘れられない味と、その理由についてお話をうかがいました。

-- 裕麻さんは食には興味がないとおっしゃっていましたが、忘れられない味と聞いて、何を思い浮かべられましたか。
永崎 世界一周を旅していた時にエチオピアで食べたインジェラです。薄いクレープ状の食べ物で、はっきり言って最初の印象は「これ、ぼろ雑巾やん」でした。インジェラは「テフ」というイネ科の穀物で出来ていて、アで主食として食べられているものです。エチオピアはるのでべますが、メインはフで作るラです。
世界一周の旅で、エチオピアにいたのは1週間から10日くらい。レストランに行くと、このテフが段ボールに一杯入ってて、それを見た時は本当に雑巾が入ってるのかと思ってた。
でもしばらくするとそれがテーブルに出て来たんです。全く事前情報もないまま、出されたインジェラを食べてみたら酸っぱい。これは腐ってるんじゃないか、お腹を壊すんじゃないかと心配になるほど。
エチオピア独特の食べ物で希少だと聞いたけど、はっきり言って美味くはなかった。

-- インジェラはどのような香りですか?
永崎 
香りは特になくて、この生地にワットという羊や鶏肉などの肉と野菜、豆などを煮込んだカレーのような、シチューのようなおかずを巻いて食べるんです。インド料理のイメージと近いかもしれない。滞在中はインジェラとパスタを交互に食べる日々でしたけれど、徐々にこの味に慣れていきました。
アフリカを縦断していた僕の旅、エチオピアの次はケニア、タンザニアと続きます。国境を越えるとこのインジェラが食べられなくなる。そう思うと寂しいような愛しいような気持ちになった。実際に次の国に行ってからは芋が主食になったので、ふと、「ああ、インジェラ食べたいなぁ」と思いましたね。

-- それはどういう感情なのでしょう?
永崎 
旅をしていたのは2005年。今ならラはも食べられるわけです。でも当時はそんな僻地のものがほかの場所で再び食べられるとは思えなかった。そういう価値かっていたんでしょう。もうエチオピアに来ることはないだろうし、二度とその国に来なくていいように、世界一周という道を選んでいましたからね。

-- 二度とその国に来なくていいように? それってどういうことですか?
永崎 
世界一周旅って、結局とても効率的なんですよ。 だって30カ国に毎年1カ国ずつ行ったら、交通費と時間のロスがものすごく大きい。でも一周しちゃえば、陸路での移動においては、数百円で次の国に行けるわけです。 だからこそもう二度と来ないよねっていう自分の中での約束と共に移動してた。インジェラももう食べられないものかもしれないって思っていたんですよね。例えば中華料理店は世界中にあるから、どこに行っても食べられるという保証がある。でもエチオピアが今後爆発的に発展しない限り、この食が世界に流通することはない。だから幸か不幸か、二度と食べられないかもしれないという価値が乗っかったのだと思います。

-- 限定とか先着と言われると是が非でも……と惜しくなっちゃうような感覚と似ているのかもしれませんね。エチオピアは世界一周旅の何番目くらいに訪れた国でしたか?
永崎 
世界一周で一気にまわった国は全部で77カ国。エチオピアは前半でした。一気に世界を周る最大のメリットは、国と国との比較ができやすいという点。例えば今年はカンボジア、来年ベトナムに行くとする。ベトナムの方が発展していると感じたとしても、一年経過していればカンボジアもまた発展している可能性がある。記憶が曖昧になりすぎて、そういう違いに気づきにくくなるわけです。
こういう実例もありました。エチオピアからケニアへ、国境を越えた瞬間に英語のレベルが変わったことがわかるんです。エチオピアよりもケニアの方が英語のレベルが高い。 ケニアではちゃんと「How are you?」って聞かれるけど、エチオピアの場合は「you?」だけ言うんだよね。 これは国境を越えてすぐだから違いに気づけたこと。5年前にエチオピアに行って、今年ケニアに行ったとしたらそういう違いはきっと覚えていないですよね。

-- もともと地理や文化人類学などに興味をお持ちだったんですか?
永崎 いいえ。世界一周の旅を終えてから勉強したというほうが正しいです。というのも世界一周したと言うと、周囲からはこの人は世界のことをなんでも知っていると思われがち。そんなわけはないんですよ(笑)。実際、少しずつしか滞在していないし。だからてます。でもやはりたり、、Wikipediaかをも「あぁな」と憶が着していくんです。後に込むのは理にかなっているから皆さんしたいですよ

-- なるほど!体験の後に、記憶の定着のために知識を入れる。どの分野にも当てはまりそうですね。
永崎 周を終えと、たいていの人はおぐになくなる。だから、グみたいなことをるのが現実かもしれません。僕は帰国してから「講演受け付けます」とアウトプットの機会を意識的に作ろうとしたので、体験を語りながら恥もかきつつ知識をプラスしていきました。

-- その後、フィジーでの暮らしも経て、現在は日本で講演活動やオンラインコミュニティーを運営されるなどされていますが、体験と知識をミックスして余白や今を楽しむことの価値に気づいた要因と時期はいつ頃ですか?
永崎 
高校の頃は将来のために役立つであろうと受験勉強に懸命でした。未来のことばかり考えて今を楽しめず窮屈に感じていましたね。大学に入ってから、今を楽しむことへの意識が強くなりました。
すよね。 長寿国だし、先のとを料はる。そういうにたくさんと思うんです。その思いもあって、「将来のために」ばかりでなく「今、ここを楽しむ」ということの大切さに気づいてもらいたくて『余白をつくる練習』という本を書きました。

-- 実は整理収納の理論ともとてもリンクする内容だなと思っています。ところで、それからというもの、インジェラは食べましたか?
永崎 えーっとね、食べてないです。これは僕にとって大事なポイントで、日本にもインジェラはもうあるということは分かったんです。Amazonとかでも買える。つまり「食べれる」っていう状態は食べなくていいんだよね。
自分が考える成功の定義とは、想定外であること。未来が読めることに関しては関心が薄いから、想定外が発生しそうな道を進むのだと思います。あ、でも食に関する冒険は昔も今も全くしないですね。冒険というか、興味がない。
でも、老後、めちゃくちゃ暇になった時の自分にとっての最大の冒険、最大の可能性は、料理が趣味になることかもしれません(笑)。

-- あの時食べたインジェラ&ワットを再現してみよう! と料理にトライする日がいつか来るかもしれないですね。ユニークな体験と思考についてのお話、ありがとうございました。

イラスト/Miho Nagai

永崎裕麻
(Yuma Nagasaki
)さん
大阪府出身。大学在学中に休学し、オーストラリアでファームステイを経験。卒業後は金融系システムエンジニアとして勤務。2005年に退職し、2年間で100カ国を巡る世界一周の旅へ。2007年には、国際的な幸福度調査で「幸せな国」として注目されるフィジー共和国に移住し、2024年に日本に再移住。現在は、フィジーでの学びを日本に届けるべく、著書執筆やオンライン講座(例:「余命の学校」では余命60日を仮定し、人生の終わりを体験しながら自分を再起動するプログラムを提供)の主宰、講演、コーチングなど幅広く活動中。著書に『世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論』『南の島フィジーの脱力幸福論』『余白をつくる練習』がある。
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