三階席から歌舞伎・愛 PR

八月納涼歌舞伎_澤瀉屋の役者さんのいいところいっぱい、ガンバレ!

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歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
印象に残った場面や役者さんについて書いています。

家庭や仕事の都合で3ヶ月ぶりの歌舞伎鑑賞。
この3ヶ月の間には、いろいろショックなこともありました。
今回取り上げる演目は歌舞伎座新開場十周年「八月納涼歌舞伎」から第三部の『新・水滸伝』です。
新とつくのは中国では斬新な設定や新しい解釈を加えると、「新」とつけるのにならったそうです。三代目 市川猿之助が次代に残す演目として、澤瀉屋四十八選に選んだ演目です。この作品は悪い役人(朝廷)とそれに反抗する悪党の集まり(梁山泊)の戦いのお話です。
台詞も現代風で、聞き取りやすいし、音楽は録音で現代劇。少しミュージカル風な面もあります。第1幕は人物紹介的な面もありますが、澤瀉屋一門のお芝居が久々に観れてとても楽しく感じました。衣装は中国が舞台なので京劇のような明るい色が多めで派手めになっています。
澤瀉屋のベテランの方も、いい味を出していたと思います。

改めて梁山泊とは……盗賊や反乱軍など国家に反旗を翻す一党が根城とする河北の湖に浮かぶ天険の小島(筋書の人物相関図より)
この梁山泊の頭に次ぐ立場で芝居を締めていたのが女親分・姫虎(ひめとら)役の市川笑三郎さん。
そして戦場で出逢った女戦士・青華(せいか)を市川笑也さんが演じ、その青華に一目惚れしちゃうのが山賊あがりの無骨者・王英(おうえい)を演じるのが市川猿弥さんです。
この二人の恋愛模様は最後まで続き、戦いの激しいシーンが続く中で、唯一、ほのぼのとした時間というか、笑ってしまうというか、ある意味この澤瀉屋名物が観られて楽しかったです。

梁山泊の頭領・晁蓋(ちょうがい)を市川中車さん、朝廷軍の若き兵士・彭玘(ほうき)は市川團子さんが演じました。團子さんは見せ場のシーンもありましたから澤瀉屋の期待の程がうかがえます。絶命するシーンは三階席からオペラグラスで凝視してしまいました。主演の林沖(りんちゅう)を演じるのは中村隼人さん。元は朝廷軍士官で今は追われる身。
急遽決まった役かもしれませんが、澤瀉屋の方々とは最近も一緒に舞台に出演していますので、息は合っていました。
格好いいのは言うまでもありませんが、2幕後半で、浅野和之さん演じる朝廷の高官・高俅(こうきゅう)に罪をなすりつけられてしまって逃亡している間に、妻が夫の無実を信じながら病で亡くなったということを知ったときの場面が印象的でした。
派手な立ち回りや見栄の目立つ場面とは違って、表情だけで悲しみを表現されていたのは流石だなと思いました。

隼人さん演じる林沖には宙乗りもありました。龍に乗って飛んでいくという設定で龍の頭の形のゴンドラのようなところに座れるようになっていて、その後ろに金属で龍の胴体がついている派手な形です。
ですが、この日は途中で見栄を切り、少し揺らしたことで胴体部分が下に向かってぶら下がってしまいました。多分金属の接続部分が折れたようです。昨日も同じ状況になったようでSNSに投稿している方も多かったです。それもご愛敬でしょうか。
大道具さんが懸命に修復して、隼人さんに「あまり揺らさないようにしてください」なんていうやりとりがあるのでしょうか。
そうは言っても宙乗りでアドレナリンは全開でしょうし、観客もここぞとばかりに拍手したい場面ですので、やはり力が入ってしまいますよね。
全体を通して澤瀉屋の役者さん達のいいところがたくさん観れて、大変楽しい時間を過ごせました。次は久々の古典の演目を観て書きたいと思います。

CHECK!

舞台写真付きの詳しい歌舞伎レポートは、エンタメターミナルの記事「歌舞伎座新開場十周年「八月納涼歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載」をご覧ください。

文・片岡巳左衛門
47歳ではじめて歌舞伎を観て、役者の生の声と華やかな衣装、舞踊の足拍子の音に魅せられる。
以来、たくさんの演目に触れたいとほぼ毎月、三階席からの歌舞伎鑑賞を続けている。
特に心躍るのは、猿之助丈の化け物や仁左衛門丈の悪役。