三階席から歌舞伎・愛 PR

若手歌舞伎役者がイキイキ、尾上左近さんに注目!_新春浅草歌舞伎

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歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる50代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
印象に残った場面や役者さんについて書いています。

三階席から歌舞伎・愛、今月は歌舞伎座の三階席ではなく、浅草公会堂で行われた「新春浅草歌舞伎」第2部をご紹介します。

「新春浅草歌舞伎」は若手歌舞伎役者の登竜門とされていることでお馴染みです。今回からメンバーが変わり、座頭が中村橋之助さんになりました。若手の役者さんがたくさん入り、フレッシュな感じがします。40年の歴史を誇るこの「新春浅草歌舞伎」、最近では、歌舞伎座などの大劇場では回ってこない大役を若手が演じ、経験を積んで、成長していくという意味合いを持っています。

「新春浅草歌舞伎」の名物といえば、お芝居の前に、お年玉ご挨拶として日替わりで行われる役者によるご挨拶。私が観劇した日は、中村莟玉さんが担当でした。口上っぽくやる時間もありますが、フランクにフレンドリーに話しかけ、歌舞伎を初めて観る方向けに禁止事項の説明をしたりします。去年までは、それに加えて、演目の内容説明もしていたのですが、今年はなんと演目の説明は、中村橋之助さんが、中村莟玉さんとは別に登場し、説明してくれました。

最初の演目は、「一、春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」です。長唄舞踊で、踊りができない私でも、楽しい気分にさせてもらえる華やかな演目です。静御前を中村鶴松さんが、曽我五郎を尾上左近さんが、曽我十郎を中村玉太郎さんが演じます。まず、衣装を観るだけでも明るい気分になります。静御前は、真っ赤な着物、曽我兄弟は、上が赤色、下が薄浅葱色で鮮やかな配色になっています。

この演目では、尾上左近さんに注目です。最近、女形を演じることも多いですが、お父上は尾上松緑さんで荒事の名人ですので、みっちりご指導をうけたのか、荒々しさを見せなければならない曽我五郎の役を見事に演じていらっしゃいました。女形も舞踊も荒事の立役も似合うなんて役者さんはそうそういません。市川染五郎さんと年齢が近いので、これからご注目いただきたいと思います。

二つ目の演目は、「二、絵本太閤記 尼ケ崎閑居の場」です。歴史でいうところの織田信長(歌舞伎では小田春永)を討った明智光秀(歌舞伎では武智光秀)が羽柴秀吉(歌舞伎では真柴久吉)に討たれる前の場面です。非常に悲しいお話です。歌舞伎の伝統的な時代物で、いずれは歌舞伎座の大舞台で演じてもらいたいと思います。

最後の演目は、「三、棒しばり」です。狂言をもとにした歌舞伎舞踊で、松羽目物です。酒が大好きな太郎冠者(市川染五郎さん)と次郎冠者(中村鷹之資さん)がメインです。大名の曽根松兵衛(中村橋之助さん)が、自分が留守をすると、酒蔵の酒を飲んでしまうのに困り、二人を棒に縛りつけたり、後ろ手に縛ってしまって酒を飲めないように一計を案じます。そこから二人がどうにかして酒を飲もうとし、実際に飲んで酔っ払っていきます。だんだんと酔っていく様子がおかしかったり、酔っ払いながら足元フラフラでもぎりぎりで倒れなかったりします。もちろん音楽のリズムにしっかり乗りながら踊っています。

なかでも、棒に手を縛られ、磔にされたイエスみたいになってしまった次郎冠者が右手で扇を投げて、左手で受け取るシーンは有名です。今回も大成功です。以前、浅草歌舞伎で、中村勘九郎さんが太郎冠者、坂東巳之助さんが次郎冠者を演じた舞台が印象に残っていますが、それに負けず劣らず、楽しく拝見できました。

メンバーが変わっても、楽しいのは変わらなかったので来年以降も観劇に来たいと思いました。
そういえば、花道横には当日券の席が設定されていました。パイプ椅子ではありますが、かなり近距離を歌舞伎役者が通りますので、好きな人にはたまらないのではないでしょうか。

歌舞伎見物後は、浅草の老舗蕎麦店「尾張屋 支店」で「天せいろ」ささっとすすって帰りました。我ながら完璧! なコース。おすすめです。

CHECK!

浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」初日鏡開きのレポートは、エンタメターミナルの記事

文・片岡巳左衛門

47歳ではじめて歌舞伎を観て、役者の生の声と華やかな衣装、舞踊の足拍子の音に魅せられる。
以来、たくさんの演目に触れたいとほぼ毎月、三階席からの歌舞伎鑑賞を続けている。
特に心躍るのは、仁左衛門丈の悪役と田中傳左衛門さんの鼓の音色。