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親子での連獅子、11歳の仔獅子に魅せられた_六月大歌舞伎

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歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる60代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
印象に残った場面や役者さんについて書いています。

先月に引き続き、歌舞伎座は八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露でした。
今回は、夜の部の観劇になります。初日ということで、著名人も来場されていたようです。私は乙武洋匡さんをお見かけしました。

「一、暫」
歌舞伎十八番で有名な演目です。まず登場人物ほとんど全員が舞台に登場し、客席の方を向いて座った状態で演じます。テレビドラマでいえば、全員カメラ目線でお芝居をするみたいな感じでしょうか? 悪役の衣装がとても面白いです。中納言清原武衝(中村芝翫)の関白宣下の祝いの言葉を述べる家臣たちは、肉襦袢を着込み、赤いメイクでいかにも悪役といった隈取。赤い腹も着物から出しています。(「腹出し」)鯰をモチーフにしたメイクと衣装の鹿島雲斎(中村雁治郎)も注目です。

清原武衝は、帝を超えるような権勢を誇り、加茂次郎義綱(中村梅玉)の父に恨みを持っているうえ、義綱の恋人桂の前(中村魁春)に横恋慕するなど典型的な悪役です。自分に歯向かうものを切るように命じると、揚幕の奥から「暫く」と鎌倉権五郎(市川團十郎)、完全無敵のスーパースターの登場です。その衣装は、五人がかりで装着し、60kgにもなるそう。花道から登場しただけで場内は大喝采でした。
残念ながら、三階席は、(花道が全部見えないので)一階席より拍手のスタートが遅れます。

七三の位置で、立ち止まり、有名な長台詞が終わると、清原武衝の手下が代わる代わる襲いかかりますが、まるで歯がたちません。市川家の芸で、得意の演目とあって、團十郎さんの演技は迫力満点、姿を見ているだけで爽快です。ため息が出るくらいかっこいいです。

最後の大立ち回りでは、歌舞伎ならではの演出があります。権五郎の周りを取り囲んだ奴たちに、大太刀をぐるりと振り回すと、奴の首が飛びます。具体的には、太刀が自分の前を過ぎると、頭の後ろの布で頭が隠れるようにあげると、客席からは赤色で後頭部が覆われ、首が飛んで、血が噴き出ているように見えます。その後、人形の頭をごろりと10個以上投げ捨てる演出です。

最後の引っ込みは、有名な六方です。表情をオペラグラスで見ましたが、もう何とも言えないくらいかっこよく、迫力満点の引っ込みでした。

「二、口上」
先月に続き口上です。今回は中村梅玉さんのお話がちょっと長いかなぁなんて感じましたが、いつもながら厳かな儀式で感動します。菊之助さんの喉の調子が悪そうで少し心配でした。やはり襲名披露公演、緊張感もすごい中、連日の大役ですから大変しょう。頑張って欲しいです。

「三、連獅子」
実の親子による連獅子というのは、いつの公演でもとても興味深く、高い期待がかけられるものです。今回は、間狂言の宗論も、主役級の中村獅童さんと片岡愛之助さんという豪華な顔合わせです。仔獅子を演じる役者さんの年齢が低すぎると、体力が十分でなく、「子供なのに頑張ってるね」という視点で拍手をもらう場合もありますが、今回の菊之助さんは違いました。全くそういうことはなくて、一人の踊り手として、決めるとこはしっかり決めて、音楽・リズムにしっかり乗って踊られていました。
最後の有名な毛ぶりの場面でも、親獅子は威厳のある大物感あるように振りますが、仔獅子は、若々しく、荒々しくエネルギッシュに、速いスピードで振らなければなりません。
11歳という年齢を感じさせず、仔獅子の役をしっかり演じておられました。素晴らしい踊りでした。
口上の時に、中村梅玉さんが、「とても踊りが上手で」とおっしゃていたのですが、素人ではありますが「そうだよね、上手だよね」と納得してしまうくらい感動いたしました。

菊之助さんが、もう少し年齢を重ねて、筋力も大人のそれになった際に、もう一度親子共演でこの演目を観たいと思いました。何年後くらいになるでしょうか。楽しみです。


襲名披露の六月大歌舞伎、大満足でした。
八代目 尾上菊五郎、六代目 尾上菊之助の襲名披露は、七月は大阪、十月に名古屋、十二月に京都、来年六月に博多までつづきます。

CHECK!

その他の歌舞伎レポートは、エンタメターミナルの記事
歌舞伎座「六月大歌舞伎」観劇レポートをご覧ください。

文・片岡巳左衛門

47歳ではじめて歌舞伎を観て、役者の生の声と華やかな衣装、舞踊の足拍子の音に魅せられる。
以来、たくさんの演目に触れたいとほぼ毎月、三階席からの歌舞伎鑑賞を続けている。
特に心躍るのは、仁左衛門丈の悪役と田中傳左衛門さんの鼓の音色。