歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる60代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
印象に残った場面や役者さんについて書いています。
今月は、「猿若祭」の名前通り、中村屋ゆかりの演目が並んだ昼の部の観劇です。
中村屋初代は歌舞伎役者であり、座元としても江戸初の常設の歌舞伎劇場「猿若座」を創設した方です。初代から脈々と続く中村屋の今を見せるため、時代物、世話物、所作事すべてに通じたこれぞ中村屋! という演目が並んでいると感じました。
なにを上演するか、きっとそのための打ち合わせなどにも時間や思いをかけるのでしょう。
昼の部の演目の中から一番印象に残った三番目の演目をご紹介。
三、「猿若祭五十年 弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい) 猿若座芝居前」
初代「猿若勘三郎」が活躍していた頃の「猿若座」がにぎわう様子を表現するため、大勢の役者が舞台に登場します。セリフも渡り台詞を用いたりして、とにかくめでたい!
芝居小屋「猿若座」の前に、最初に登場したのは、中村扇雀さん、中村芝翫さん、中村福助さんです。芝居茶屋のおかみや地域の名主とその妻という役です。
感激したのは、中村福助さんです。福助さんといえば、2013年に脳内出血で倒れ長らく休養され、2018年に舞台復帰。現在もリハビリを続けられているようで、立つこともラクではないはず。黒子に支えながら立って舞台に出ていらっしゃいます。衣裳をつけてものすごい重量の役者さんを支える黒子さんの懸命さも伝わってきました。
舞台上では「猿若座がにぎわっていてめでたい」という台詞が次々と発せられます。何がめでたいかといえば、猿若祭が歌舞伎座で初めて興行されてから50年という節目の年だからです。
その後、中村勘九郎さん、中村七之助さんが猿若座の座元と女房として登場し、場内は一気に盛り上がります。猿若座の役者たちも姿を見せると、座元は挨拶をして回ります。
愛想がいい座元として挨拶する中村勘九郎さんを見ては、非常に楽しい気分になりました。
そこへ花道に粋な姿の男伊達5名、あでやかな女伊達5名が登場し、花道上で次々と名乗りをあげ挨拶していくのですが……。
悲しいかな、ここは3階です。花道上に勢ぞろいされても、2名しか見れません。
私が三階席からその姿を拝見することができたのは、中村歌昇さんと坂東新梧さんのみでした。視覚的にはそんな状況のわけですが、残りの方については、声と小気味いい台詞まわしを聴覚で十分に楽しみました。
最後に登場したのは、京の呉服問屋 松嶋屋の旦那、新左衛門役の片岡仁左衛門さんと、妻役の片岡孝太郎さんの登場です。猿若祭五十年の祝にはるばる京から駆け付けました。
初代の猿若勘三郎も、生まれは諸説ありますが、京から江戸に出てきて成功したといわれています。そのあたりも考慮された設定なのでしょう。
新左衛門の台詞には、片岡仁左衛門さんと18世中村勘三郎さんとの思い出話も入ってきますので、長年のファンの方たちからは、ドッカンドッカン笑いが起こります。
仁左衛門さんのご尊顔を拝見し、とても楽しい一幕でした。
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「令和8年2月歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」歌舞伎座の年中行事!!「節分祭」豆まき」をご覧ください。
47歳ではじめて歌舞伎を観て、役者の生の声と華やかな衣装、舞踊の足拍子の音に魅せられる。
以来、たくさんの演目に触れたいとほぼ毎月、三階席からの歌舞伎鑑賞を続けている。
特に心躍るのは、仁左衛門丈の悪役と田中傳左衛門さんの鼓の音色。

