理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。
ここ最近の私といえば、義母に穏やかに過ごしてもらうことをミッションとしている。
というのも夕方はご機嫌斜めになり、私のダメ出しに癇癪を起したり、悲観したりすることがつづいたりしたからだ。
薬を飲まないと勝手に決める義母。
飲んでくれないと困るよという私。
ベッドに寝る体勢がおかしいから直そうと手伝う私。
それに応じたがらない義母。
どちらも譲らずにいると、すばらしき肺活量で結構大きな声を出されることもあり、
仕方がないと思いながらも、やっぱりちょっと傷つく。
原因ははっきりしている。私がダメ出しを止めないからだ。
プロなら絶対に、義母が嫌がるならほかの手やほかの言い方をして対応するのだろうから。
でも私はプロではない。
理由あって週イチ義母宅に通う嫁なのだ。
ベッドの一件があった翌週、出かけに夫(義母の息子ね)から、
「ちょっと寝方がめちゃくちゃだったりしても好きにさせちゃって!」と言われた。
このパンチがすごくボディーに効いた。
私には学習能力がある。先週と同じような策はとるまい。
そうわかっているところに、念押しされたのだ。
もちろん夫に悪気はない。私を気遣ってのことである。
義母を気遣ってのことでもある。
当初は義母に対して夫がイライラして声を荒らげるのを私がなだめることのほうが多かった。
だのに、なのに……。なんか、クヤシイ。
そんなわけで「ちょっと聞いてよ……!」みたいな報告を極力しなくて済むように、
私の学習能力をフルスロットルにして、その後も週イチ義母宅に通っている。
その成果は如実に表れていて、今日も穏やかにその一日は過ぎた。
昼食の時のことだ。
買って行ったまあまあボリュームのある天丼弁当を食べきり、付け合わせの春雨サラダも何度か声かけをしたらしっかり食べてくれた。
ああ、お腹いっぱい。
この様子じゃ、コンビニで買ったマスカットのゼリーは食べられないかもしれないな。
大きい1個を私と義母で分けて食べようとガラスのカップに取り分けていた。
無理に食べさせずに、いらないと言われたらプリプリせずにそれはおやつか夜に回そう。
そんな風に頭の中でプチシミュレーションしていた。
「ごちそうさま。お腹いっぱいだよね」
「うん。お腹いっぱい」
「ぶどうのゼリーあるんだけど、お腹いっぱいならおやつに回そうか」
「食べよう!」
最後の問いかけに食い気味に義母が言った。
うす緑のさわやかなゼリーを二人でチュルチュルと食べながら、
今日も大丈夫と確信した。