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実物への憧憬が芽生える「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」

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気になるプロダクトやプロジェクトをエンタメ性や整理収納の考え方に寄り添いながら紹介し、読者の「キニナル」を刺激します。

気がつくと、世界で活躍する人の多くが年下または年齢が近い人になっている。
いや、これは今に始まった話ではないのだが、「スゴイ人」というのが、遥か昔の人であることで自分が何者でもないことに安心しようとする傾向があるのだと思う。
なぜそんなことを言うのかといえば、先日友人のお誘いで「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築」を観に行ったからだ。

ヘザウィック・スタジオは世界が注目するデザイン集団。
これを作ったトーマス・ヘザウィックは、1970年の英国生まれだ。
はい、ほぼ同年代。

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)で3月から開催されていたこのヘザウィック・スタジオ展にはヘザウィック・スタジオが手がけた数々のデザインプロジェクトが展示されていた。
28の主要プロジェクトは、簡単に言えば、目を引くユニークな形状の建築やプロダクトばかりだ。
なぜこんな発想ができるの? という素朴な疑問を解くために、
それぞれが生まれた意味やねらいを文字で読み、映像で見て、模型やレプリカで体感する。

例えば、数種類の色が混じった砂糖菓子(たぶんキャンディーのような)の塊がグニャッとなっている様子から、「エクストリュージョン(押し出し)」というアルミニウムの作品につながっているという。
面白い。

作品になるまでのたくさんの過程も展示されていた。スケッチや模型、試作の数々があって最終的な建築に至るのだ。
そこにかかる年月や労力に思いを馳せた。

数多くの展示の中で、何に興味を惹かれるかは人それぞれだ。
今回、4人でこの展覧会を訪れたが、長く立ち止まる箇所がいろいろだった。
気づく箇所、疑問に思う箇所もいろいろだ。
時折、「ねえねえ!この建築〇〇なんだって!!」と声をかけ、その感銘を共有した。

例えばこれ。ロンドンの「パーテルノステル通気口」
パッと見たら、「アートだなぁ……」くらいにしか気づけないだろう。
でもこれは通気口。スペースや環境条件を踏まえてそれを建築デザインとしてオファーできる側も素晴らしいと思うのだが、いわば日陰の存在、なんなら邪魔な存在にされそうな通気口がこうして表に出てカッコイイ存在になるのだ。
面白い。

そのほかにも気になる作品がたくさんあった。
これは中国・海南省にある海南舞台芸術センター。
街の中に、オペラハウス、コンサートホール、劇場が融合しているのだそうだ。
いいなぁ、大抵は「建物はすばらしいけど、交通の便が悪い」またはその逆ということが多いのだから。

さて、最後の展示エリアには、ヘザウィックの代表的なプロダクトである回転する椅子「スパン」が多数展示されていて、実際に座ることが出来た。

「酔いそう」「安定しないし、落ち着かないよね」という大方の予想だったが、
実際に座ってみると、予想以上のホールド感があって、なにより放っておいてくれるような自由度があった。
これがどのくらいの重量があるのかを確かめずにはいられなかったのは、クリンネストとしてお掃除についても教えているお二人だった。

私はそもそもこの椅子を置ける空間に暮らしていたら、動かして掃除をするという概念はゼロだった。
そういう我に関しても実はわかってしまうんだな。

写真や模型でこんなに面白いと思えるのだから、実物を見たらきっともっと面白いと感じることだろう。
「このヘザウィックの建築が見たかったの!」
セリフみたいな感嘆の声をあげて、建築物の前に立つ自分を思わず想像した。
行ってみたい国、行ってみたい理由がまた増えた。

ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築
会期/2023年3月17日(金)~6月4日(日)
場所/東京シティビュー[六本木ヒルズ森タワー52階]