誰かと一緒に観劇すると、共感が何倍にも膨らんだり、違った目線がプラスされます。
作品をフィーチャーしながら、ゲストと共にさまざまな目線でエンタメを楽しくご紹介します。
今回ご紹介する舞台作品は、林遣都さん、山本耕史さんらが出演の音楽劇『浅草キッド』。
ご一緒したのは、私のアンフォゲ飯のイラストご担当、片づけヘルパーの永井美穂さん、三ツ井さくらさん、このコーナーには初めて登場のいわさきなおこさんという整理収納アドバイザー3名です。たくさんのお客様でにぎわいを見せていた明治座での観劇後、気張らず軽く腹ごしらえしつつ、スマホで諸々検索しながら観たばかりの作品について語りました。
※以下、作品のネタバレを含みます。
大学を中退した武が浅草にふらりとやって来た。やがて武はエレベーターボーイとして働くストリップ劇場・フランス座で、芸人・深見千三郎の弟子となる。タップダンスを練習し、深見や二郎と共に舞台でコントに出演する日々。しかし、フランス座は客足が減る一方。時代はテレビ全盛期、芸人もどんどんテレビに出始めた。
武は、二郎(のちのビートきよし)の誘いを受け、漫才師としてテレビ進出をめざし、恩人・深見の元を去ることに。そして武はテレビ界のスターになっていく。そんなある日……。
音楽劇というスタイルが
ぴったりくる作品
栗原 音楽がとても楽しくて、タップダンスのシーンも、たくさんありましたね。
永井 タップは林(遣都)くんの方がうまかったなぁ。
三ツ井 物語はたけしが芸人をめざす前のところから描かれていたから、師匠・深見役の山本(耕史)さんがなかなか出てこなかったよね。結構、まだかなまだかなって思って観てました。
栗原 私と三ツ井さんはNetflixで配信された映画を観てる組です。映画版では最初の学生運動の頃の部分はなかったけど、原作にはそこから描かれているんでしょうね。
三ツ井 私はミュージカルより音楽劇の方が得意かも。ミュージカルって音楽が全般にあって心地よくて眠くなっちゃうので(笑)。だからこの作品、とても観やすかったです。
※音楽劇は芝居の間に状況を説明したり、感情が歌詞になっていたりする音楽(やダンス)が挟まれるスタイルで、ミュージカルは台詞自体が音楽になっていて歌とともにお芝居が進むスタイル
栗原 この作品に音楽劇というスタイルはとても合っていたよね。
いわさき 山本さん、格好良かったですね。ギターも弾いて歌っているのをテレビで見たことがあったけれど、生で聴いたら想像以上に上手かったですね。
永井 林くんは背筋の丸め方とかがうまいね。
三ツ井 たけしに似てた。顔は全然違うのに、特に後半はよりたけしっぽくなってたなぁ。
永井 私は歌姫とか面倒見のいい演芸場のおばさん役であめくみちこさんが出ていたのが感動した。よく観に行く東京ヴォードヴィルショーでは大人しい役が多いけど、やっぱり上手いなぁと思って。あと最後の挨拶の時のお辞儀の角度が本当に上手いなぁって思って。
いわさき すごい、そういうところも見てるんですね!
永井 今野(浩喜)が(ビート)きよし役だったよね。
三ツ井 芝居がうまくて存在感あったー。しかも踊ってたし。
永井 社長の歌を盛り上げる時がめちゃくちゃ楽しかった。
栗原 舞台の奥にホッピー通りがあって、そこにバンドさんがいるのもいい感じだったよね。
永井 ちょっと浅草に行きたくなった。私は飲めないから浅草に行ってもホッピー通りには行かないけど、前を通るとああいう感じだったなぁと思って、そういう浅草の感じがセットでよく表現されてたよね。
改めて知った
たけしにとってのきよしの存在
いわさき たけしさんが「こうしていられるのはきよしさんのおかげです」みたいなことをよく言っていたのはこういうこと(漫才に誘ったのがきよしだった)だったんだ。
三ツ井 たけしのような破天荒な人を抑える人も必要だし、きよしがその役割だったんだろうね。
いわさき 知っている人も少なくなっちゃってるかもだけど、きよしさんが中心になっていた「うなずきトリオ」なんて、今でいうところのじゃない方芸人だったでしょ。
栗原 じゃない方がいるからコンビって成立するみたいなところあるもんね。うなずきトリオはひょうきん族の中で誕生したトリオだったよね。
永井 うーん、そう考えるとやっぱり今野がうまかったなぁ。
三ツ井 高山役の松下優也さん、オーバーアクションだったけど歌がめちゃくちゃうまかった。
いわさき マーキー役の稲葉友さんとか、井上役の森永悠希さんはテレビドラマとかでよく見る印象だったけど、舞台にも出られるんですね。
永井 あの時代を知らない若者がこういうお芝居を演じるっていうのが、改めて面白いよね。私も深見千三郎の時代を知っているわけではないけど(笑)。
栗原 時代といえば、台詞の中にトルコ風呂って出て来て、そういえばソープランドを昔はそう言ってたよなーと久しぶりに思い出した。そこで働く人をトルコ嬢って言ってたよね。
いわさき 覚えてる!
知らなかった
ザ・浅草の人
栗原 映像も演出としてほどよく使われてましたね。
いわさき セットが平面的ではなくてとても奥行があって、立体感がある感じで転換が多かったから、舞台の展開に飽きることがなかった。キャストさんが自分で動かすところも多いんだなぁーってびっくりしました。
栗原 ラストの方で家が近づいてくるシーンとか、山本さんの台詞でケラケラ笑っちゃった。
いわさき なんかアドリブっぽい感じでしたよね。お稽古とかでアドリブで言ってたのがだんだんそのまま台詞に変わっていったのかも!?
永井 変わったのかもね! 山本耕史さんだったらああいう感じで言いそう……。
栗原 上演時間は、一幕が80分、休憩30分で、二幕が85分でした。
永井 長いかなぁと思ってだけど、実際は長く感じなかった。
いわさき (たけしが)売れてからのエピソードは省略って感じでしたね。
栗原 舞台でテレビのエピソードをピックアップするとなんかチープに見えちゃうかもしれないからあえて外してたのかなぁなんて。映画の方ではツービートとしてテレビデビューするシーンなんかも印象的だったけど、舞台では背中越ししか見せなかった感じだったよね。
三ツ井 深見さんは実際も59歳で亡くなっているんだね。
永井 早すぎるよね。
栗原 実際もタバコの火の不始末が原因の火事で亡くなっているそうです。
三ツ井 萩本欽一とか東八郎の師匠でもあるんだね。でもテレビに出ないから私達は知らなかったんだ。
いわさき 深見さんって本当にザ・浅草の師匠だったんだ。
栗原 浅草ってすごい町だったんだなぁ。
永井 もうフランス座(たけしが働いていたストリップ小屋)はもうないんだっけ?
栗原 たぶん……。
※確認したところ、ストリップ劇場としては2000年に営業を終了し、現在は浅草フランス座演芸場東洋館として運営されている。
セーターとまさかのTikTok!?
時代の象徴と付け合わせてみた
いわさき えー、きよしさんって、今、TikTokやってますよ!
栗原 場所にこだわらず、次のフィールドを探す精神は健在なのかな。
三ツ井 まあ、特に(生活に)困らないだろうしね。
永井 私たちはたけしがその後どうなっていくのかを知ってるじゃない。だからフランス座辞めます……言っても、その後売れるのはわかっているからちょっと安心して観ていられたな。その人の人生を知らないで観る時って、「この先どうなっちゃうんだろう?」ってなんか変にドキドキしちゃったりするけど。
栗原 林さん演じるたけしが売れてから着ていたセーターが、たけしのまんまだったよね。
三ツ井 インポートブランドが流行った時代、師匠が言った「芸人は外ではいい服を着なきゃダメだ」っていう教えを貫いた感じなのかな。
栗原 あのニットを今、菅田将暉さんとかが着こなしたりしてるよね。逆に菅田将暉クラスじゃないと着こなせないというかオシャレ認定されない気もするけど。
永井 今、若い子たちがお父さんとかおじいちゃんの洋服着るのが流行ってるんでしょ?
栗原 エモいってやつ、なんでしょ? (笑)
栗原 パンフレットのキャストページを見ると、アンサンブルの皆さんがすごくたさんの役をされているのがわかりますね。
いわさき 衣装チェンジしながら、セットも動かすし、小道具も片付けるし、すごい段どりが良くて、それも稽古の賜物なんでしょうね。少しでもズレたら大変。
永井 音楽もあるからどの場面もスムーズだったよね。この中に舞台で活躍しているすごい俳優さんとかもいるのかな?
いわさき 朝ドラで見たことあるなぁっていう俳優さんがいた気がするんですよね。
三ツ井 この人なんて写真とイメージ違ったけど……。やっぱり俳優さんは化けるね。
※この後、キャストページとプロフィールページを行ったり来たりしながら、チェックをつづけました。
永井 この舞台、結構長丁場なんだね。
いわさき 今日なんて、夜公演もあるんですよね。すごいカロリー消費するだろうなぁ。
栗原 東京公演が終わると、大阪、愛知での公演へと続きます。ますますチームワーク良くなっていきそうで楽しみですね。
今日はありがとうございました。また、楽しい作品もご一緒しましょう。
音楽劇『浅草キッド』
東京公演/2023年10月8日(日)~10月22日(日)
明治座
大阪公演/2023年10月30日(月)~11月5日(日)
新歌舞伎座
愛知公演/2023年11月25日(土)~11月26日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール
原作/ビートたけし
脚本・演出/福原充則
音楽・音楽監督/増田トッシュ
出演/林遣都、山本耕史、松下優也、今野浩喜、稲葉友、森永悠希、紺野まひる、あめくみちこ ほか