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うなぎへのサンサーラ

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

義母との月イチ面会の日。この日はそれと同じくらいメインを張るイベントがあった。
「鰻を食べる」である。
結婚した時に、「年に一度くらいでいいから、鰻は美味しいところで美味しいものを食べよう」
というルールが出来た。
これを守りに守って、デパートやスーパーで鰻を買うことは基本的にない。
ちょっと待った! 無銭飲食日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。外出先で美味しい鰻を食べることになった。特上を得意満面に注文した後に、その店がカードが使えないという事実が発覚。慌てた私たちは……という話。...

土用の丑の日を過ぎた直後の週末だった。
お店探しは夫の役割。まあ、ほとんど検索して見る先は共通しているのだが、その日も義母が入所している施設とわが家の間で寄れる店を選んで、周辺のコインパーキングまで調べてくれていた。

「予約しなくて大丈夫なのかな? 昼は予約受けてないの?」と軽く聞いたものの、
見切り発車でレンタカーを発車した。
混雑を避けつつどの道で行くかの勘も当たり、ほぼ予定通りで開店の10分前には店に着いた。そして……予約でいっぱい、待っても入れない、だった。
いい大人な二人なのに、店に予約をして行く習慣があまりない。
千葉だし、まあ、大丈夫だろうという謎に高を括るところも悪い癖だ。前日の夜からもう、鰻腹になっている私たちは、第二候補の店の近くへ移動した。
近くのドラッグストアのパーキングに駐車し、今度はせめて電話をしてみようということになった。
こんな時、かけるのは私の役目になることが多い。昼時、問い合わせると案の定、その店もNGだった。
駐車場でしばし考える。頭を冷やすためにドラッグストアに入り、トイレのお掃除シートを買う。一旦、水に長そう……の気持ちだったわけでもないのだが。そうして、昼の鰻はあきらめ、面会後、早めだけれど夕方に鰻を食べることにしようということになった。
帰り道に寄れそうな店を選び、問い合わせる。今度は夫に電話をかけてもらった。
結果……17時入店したとして18時までに退店してもらえるならとのこと。
それじゃあ鰻を食べる時間はなさそうだ。
あきらめて、結局は面会後は真っ直ぐ帰宅して、何度か行っている近所の鰻やさんに行こうということにした。
予約は受けない店である。もしそれでダメなら、日を改めるということで意見が一致した。
食に関してはチームプレーが取れる夫婦なのだ。さて、鰻腹を一旦引っ込め、昼食をどうしようか問題。
ドラッグストアの駐車場に停めた車の中で考えた。
と、目の前に建っているマンションの1階にカレーの店があるのが見えた。
店の名は「サンサーラ」

「ねぇねぇ、もうさ、サンサーラなんじゃないの?」
「やっぱり? そう思った」

鰻からカレーに大きくハンドルを切り、その店に入った。
先客が1組。店長さんらしき白髪のおじさま、そして外国人シェフ2名。
リーズナブルなカレーセットを注文し、熱々のナンとカレーを堪能した。
おかしなことを言うようだが、水が美味しかった。

店内にいる間に、3組ほどテイクアウトの客があった。
マンションの1階に入っていることもあるし、この店は実は近隣では評判のテイクアウト人気店なのかもしれない。

鰻に振られた私たちに「サンサーラ」がくれた小さな幸せ。
美味しく食べ終え、アイスチャイで喉をうるおし、お会計をする時に、
白髪の柔和な感じの店長に美味しかったことを告げつつ、調子に乗って
「あとお水がとっても美味しかったです」と付け足した。
え? と驚いた顔をした店長が微笑みながらくれた言葉は、
「普通の水です」

ちょっと恥ずかしくなりつつ、でも本当に美味しかったので伝えられて満足な二人。
義母の面会時間にもばっちり間に合って、文句なしの昼食にニヤついた。
「サンサーラ」の意味は「輪廻転生」。大丈夫、ちゃんと鰻もまた巡ってくるので。