ドラマの中には暮らしや整理収納のヒントがあふれている。
あのテレビドラマのシーンから整理収納のプロが分析・解説する!?
ちょっとニッチなドラマレビュー。
小さなころからテレビドラマが大好きです。
妄想癖がある私は画面を見ながら自由自在に思いを巡らせていました。
整理収納アドバイザーになってからは
そのシーンや内容は「整理収納」とリンクしても楽しめるようになりました。
今回取り上げたドラマは蓮佛美沙子さん主演の「バニラな毎日」です。
最近NHK夜ドラを観る事が増えています。月~木22:45~23:00の15分のショートドラマなのでゆったりした夜の時間に観るのにちょうどよいのです。
それに、今回のドラマは「バニラ」と聞いて想像する通り、美味しそうなお菓子がたくさん登場して、気持ちもほっこりしますよ。
パティシエの白井葵(蓮佛美沙子)は製作から販売まで自分一人で行うスイーツ店を閉店する。
最高の材料で自分の納得するスイーツをストイックに作りたいあまり、経営に行き詰まった結果だった。 ある時借金を抱えてバイト生活をしていた白井さんのもとに料理研究家の佐渡谷真奈美(永作博美)が現われ、「白井さんに手伝ってもらってお菓子教室をやりたいから厨房を貸りたい」と申し出る。お金に困っていた白井さんは、渋々1日1組のお菓子教室を手伝い始める。そこは様々な理由で痛みを抱える人に寄り添い、一緒に最高のお菓子を作るお菓子教室だった。
そしてお菓子教室は訪れる人も教える白井さんも心を開放できるサードプレイスになってゆ
く。
生み出す場所と実現する場所
白井さんは本場でも勉強を積んだ拘りの強いフランス菓子のパティシエです。
完璧な自分のお菓子をストイックに作る白井さんらしく、厨房はピカピカで、道具もきっちり整って置かれていて、リズミカルな動きを阻むことなく取り出しもスムーズ。 まっさらな天板の上に美しいお菓子を創り出す白井さんはまるで芸術家のようです。
このドラマを観ていて何かを生み出すにはこのように何もない空間が必要なのか? ということを考えてみたのですが、そうとも言えないということに改めて気づきました。
例えばお菓子教室に通ってきた人の中に秋山静(木戸大聖)という男性がいます。
彼は曲も作るロックミュージシャンで、つまりゼロから1を作るという意味では白井さんと同じなのだけれど、彼の作詞の環境は決してまっさらとは言えない様子でした。
静君に限らずものを生み出す場所は片付いた空間ばかりではありません。
ある人は「散歩中に降ってくる」と言い、またある人は酒におぼれ、自堕落な暮らしの中から生み出す人もいます。
翻って白井さんの空間をもう一度考えてみると、厨房は生み出す場所というよりは「頭の中に生まれたお菓子を実現するための場所」なのだと気づきます。
だから、作業がしやすくなければならないし、製菓ツールがすぐに手に取れる状態であることが望ましいのです。
「生み出す場所」も「実現する場所」も使う人が違えば違ってくるものです。同じ場所を多人数で使うのならばすり合わせも必要です。
まずは自分がここで何をしたくて、どのような空間を望んでいるのかということと向き合うことが大切です。
そして、この作業が実はとても楽しいことなので、出来る出来ないはさておいて、片付かないと悩んでいる人にも是非やってみてほしいです。
わたしなんて、この妄想している時が自宅の至福の時間になっていて、家事の時間を度々侵食して困っています。
そしてたっぷり妄想したら、実現するための具体的な事、つまり動線や動作の事、モノの量の事などを落とし込んでゆけば良いのです。
妄想をどれだけ実現できるか!夢の空間のためにモチベーションも上がるというものです。
空間は変わるもの
さて、たった一人の張りつめた空間だった厨房で白井さんは完璧なお菓子を作り続けてきま
した。でも佐渡谷さんや静君をはじめ多くの人と出会い、事故で右手が思うように動かなくなるという自身の辛い変化の中で、自分は誰のために何をしたいのかと改めて向き合います。
白井さんの空間はきっと変化をしてゆくのでしょう。 したいことが変われば、空間は変わるものです。 願わくば、甘いお菓子の香りと共に温かい空間となりますように。
*番組で出てくるお菓子はHPのレシピから再現可能です。私は出演者の評判も高い「タル
ト・タタン」を作ってみたいです。