紅茶コーディネーターのイノチカが、さまざまな角度から紅茶と共に過ごす時間をご提案するオリジナルエッセイ。
好きなのは紅茶を愉しむしあわせな時間と空間。
一人の時もあれば、大切な誰かと一緒の時も。自宅をはじめ居心地の良い場所でのTeatime。
私の人生の中で、紅茶と紐づく記憶は、いつもしあわせと結びついています。
暮らしに紅茶を取り入れて、日常にもっともっとしあわせな時間を増やしていくことができたなら……。
紅茶にまつわるあれこれを綴ります。どうぞ紅茶を片手にお付き合いください。
《Tea and・・・万博生まれのアイスティー》
4月から55年ぶりの大阪万博が開催されていますね。
もう参加されましたか?
私はチケットを頂いたのですが、まだ行く予定を立てられていません。
できれば真夏は避けたいなと思ってはいるのですが……。
5月というのに既に猛暑日を記録。この調子では、今年の夏も暑くなりそうですね。
やはり暑くなると紅茶もホットよりはアイスティーを頂きたくなるもの。
今ではペットボトルで気軽に飲めるようになったアイスティーですが、イギリスではなくアメリカで誕生したことをご存じでしょうか。
1904年(明治37年)に開催されたアメリカ・セントルイス万国博覧会でのこと、イギリス人のリチャード・ブレチンデンが、東インドパビリオンで紅茶を宣伝していました。ところが7月の暑さでホットの紅茶はなかなか試飲してもらえなかったそう。そこで何かいい方法はないかと考え、氷を入れてアイスティーにしてみたら大人気になったそうです。
紅茶は熱いモノというあたりまえを見直し、氷を入れて冷たくするというひらめきで、120年後の私達も愉しめているアイスティーが生まれたのですね。
ホットの紅茶は世界中で飲まれていますが、その後も水質の問題で安全な氷が手に入りにくいことも影響し、ほとんどの国でアイスティーはあまり普及してきませんでした。
また、その他の理由として、その国独自の紅茶の楽しみ方もあり、インドのチャイやイギリスのアフタヌーンティー、ロシアのサモア―ルなど伝統的な飲み方を大切にする文化的な背景もあるようです。
現在もアイスティーの消費量はアメリカや日本が多いようです。
日本でアイスティーが普及したのはペットボトル入りの紅茶が誕生した影響も大きいと思います。
今では当たり前に飲んでいるペットボトルの紅茶も、商品化されるまでは数々の苦労があったそう。
そもそも、紅茶は冷やすとクリームダウンという現象が起き、濁ってしまうことも良くあります。
澄んだ綺麗な紅茶の色を保ちながら濁りを抑える技術を開発し、1986年に発売されたのがキリン『午後の紅茶』
以来、何度もリニューアルを繰り返し、今では無糖やミルクティー、レモンティーなど種類も豊富になりました。
商品企画・製造技術開発に携わってくださった多くの皆様のおかげで、気軽に美味しいアイスティーがいただけるのだと思うと心から感謝です。
余談になりますが、キリン『午後の紅茶』のパッケージに出ている肖像画の貴婦人は第7代ベッドフォード公爵夫人・アンナ・マリア。
彼女はTea and…の2023年5月の連載記事「女ごころとアフタヌーンティー」にも登場している人物です。
ぜひ『午後の紅茶』を手に取る際は注目してみてくださいね。
これから大阪万博に行かれる方は、歴史に思いを馳せ、すばらしい未来をイメージして楽しんでいらしてください。
今後100年後の未来、私たちの子孫があたりまえに楽しんでいる「まだ見ぬ何か」に出会えるかも知れませんね。
ぜひ、その時は紅茶をお供に。喉を潤すだけでなく、人混みでの感染予防にも紅茶の殺菌力や抗菌力がお役に立てると思います。
そろそろ紅茶のお代わりはいかがですか?
爽やかな季節から蒸し暑い季節に代わってストレスを感じやすい時期かと思いますので、そんな時はぜひTeatimeで一息ついて、リフレッシュしてくださいね。