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走ろうぜ、マージ / 馳 星周

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アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中かにおら、読者すすめの一冊をご紹介します。

走ろうぜ、マージ / 馳 星周

バーニーズ・マウンテンドッグ。体高は60センチ前後、体重は35キロから60キロに達することもあるこの大型犬は、他の犬種に比べ癌などになることが多く、また寿命も短い。『3歳までは幼犬、6歳までは良犬、9歳までは老犬、10歳からは神様の贈り物』という言葉があるそうで、穏やかで人が大好きな犬種だ。
マージとワルテルという、この犬種2頭と暮らしていた馳星周夫妻。そのマージが11歳の時、胸にしこりが見つかった。癌だ。余命は三ヶ月。マージにとって最後になるかもしれないこの夏を、このご夫妻は、病魔と闘いながら、マージの大好きな軽井沢で貸別荘を借りて一緒に過ごすことに決めた。もちろん、わんぱくワルテルも一緒に。

治療を続けながら、東京と軽井沢を行き来する生活は、なかなかに大変だ。でも、ここ6ヶ月苦しそうに歩く姿を見せるだけだったマージが、軽井沢だと笑顔を見せて走るのだ。
そして、胸のしこりも、柔らかく、小さくなっているのだ。緑が多く、酷暑の東京より快適な軽井沢は、人間にとってもだが、犬たちにとっていいことばかり。もちろん、まだ年若いワルテルも楽し気だ。彼らが笑顔だと、飼い主も笑顔。飼い主が嬉しそうだと、犬たちもさらに嬉しそう。愛しい日々。マージを逝かせる心の準備は出来ている、はず、だ。軽井沢に来て、元気になったように見えるし、事実そうなのだが、しかし着実に病魔はマージを蝕んでいる。でも出来ることならなるべく苦しまず、最後まで楽しく幸せな気持ちでいさせてやりたい。いつからか、貸別荘ではなく、軽井沢で家を建てることに決めた。叶うのならば、マージが生きている間に……

ついこの間のこと。我が愛犬のさくらが、体調を崩した。食欲もなく、丸~くなって寝てばかり……夏バテかな?と思いながら、病院へ連れて行って検査をしたら、いろいろな数値が異常値を示していて、そのまま入院となった。
病院へ行って即入院なんて、初めてのこと。我が家はどんよりとして、静かだった。存在の大きさはわかっていたけれど、本当に辛かった。誰かが、
「さくら、どうしてるかな……」
なんて言おうものなら、
「そういうこと言わないで! 考えないようにしてるんだから」
と気色ばむ始末。
さくら不在5日目、思い余って病院に電話したら、
「実は……夜になると毎日暴れて、点滴の針を外しちゃうんですよ。さくらちゃんは、入院より、毎日になっちゃうけど通院での治療の方が、いいかもしれませんね」
ということで、さくら不在限界値を超えていた私たち家族も、もちろん異論なく、即座に同意した。
15歳。高齢。でも、夜になると、「まだ、帰れないの?!」と暴れるさくらに、ちょっと頼もしさも感じた。
現在も引き続き治療中だけど、数値も改善傾向。通院の間隔も開いてきて、毎日じゃなくても良くなって一安心。前は、すぐ他の犬を見ると吠えかかったりするのを、「こら!まったく!」なんて軽く怒ってたけど、退院して、お散歩して、初めて元気に他のワンコに吠えかかった時は、嬉しくて涙が出た。食欲があまりなくなっていたさくらが、退院後、ごはんを初めて完食したときは、家族みんなで歓声を上げた。

いつか別れが来ることは、頭では理解しているけれど、想像するだけでどうしようもなく悲しい。ワンコを飼っている友人が、
「うちの子が死んだら、その次の日くらいに死にたい」
と言っていた。もちろん、愛犬だってそんなことを望んでいないだろうし、彼女は愛犬の死を時間がかかってもきっと乗り越えることが出来る。でも、その気持ちわかるなぁ……、と思ってしまった。

コトバで伝えることが出来ないワンコの、『苦しい』、『痛い』には、早く気づいてあげたい。すぐに取り除いてあげたい。美味しいものを、おいしいおいしいって、食べて欲しい。楽しくしてほしい。気持ちよくいて欲しい。
出来る限り、どんなことでもしたい。するよ。だからさ、1日でも長く、そばにいてね。

文と写真・こばやしいちこ

小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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