自分らしさ、暮らしやすさを提案するらしく・おうちと整理研究所 主宰の柳澤とも子が、夫婦で手塩にかけて作る庭と植物についてつづるガーデンフォトエッセイ。
3月に入ると、まだ空気は冷たいのに、庭のあちこちで春の気配が動き始めます。
朝の空気には冬の名残があり、吐く息もまだ白い日がありますが、それでも庭に出ると「もうすぐ春だな」と感じる瞬間が増えてきました。
その合図をいちばん最初に届けてくれるのが、庭の特等席に鎮座しているシンボルツリーのミモザです。
ふわふわとした黄色い花が枝いっぱいに広がり、曇り空の日でも庭がぱっと明るくなります。冬のあいだ静かだった庭に、急に光が差し込んだような気持ちになります。
またユキヤナギも少し遅れて白い小さな花を咲かせ始めました。枝いっぱいに並ぶ小さな花が風に揺れる様子は、まるで白い霞がかかったよう。庭の景色が一気に軽やかになります。
そして、もうひとつこの季節に欠かせないのがクリスマスローズ。
下向きに静かに咲く花は控えめですが、冬の終わりから春の入り口まで、長く庭を彩ってくれます。寒い時期をじっと耐えながら、気づけば満開になっている姿を見ると、植物の強さにいつも感心させられます。
こうして花が順番に咲き始めると、庭全体がゆっくりと目を覚ましていくようです。
冬のあいだ静かだった庭が、少しずつ色と動きを取り戻していく。この季節の変化を見るのが、毎年の楽しみでもあります。
そんな春の庭を眺めながら、ふと家の中のことも思い出しました。
冬のあいだ厚手のコートやマフラーでいっぱいだったクローゼットを、先日少し整理したのです。手袋やストールを箱にまとめ、春用の薄手の上着を前に出すだけで、同じ空間なのにぐっと軽く感じました。
整理収納というと「片づける」ことばかりを考えてしまいますが、季節に合わせて入れ替えるだけでも、暮らしはずいぶん整います。
庭の植物が順番に役割を交代していくように、家の中のモノも、季節ごとに少しずつ主役が入れ替わる。その流れを整えてあげることが、暮らしを気持ちよくするコツなのかもしれません。
ミモザの黄色、ユキヤナギの白、クリスマスローズの落ち着いた色。
そんな春の色を眺めながら、家の中にも同じように季節の風を通していきたいなと思うこの頃です。
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