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聡乃学習 / 小林聡美

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アトリエM_こばやしいちこによるブックインスピレーションエッセイ。たくさん読んだ本の中から一冊をフィーチャーしながらオリジナルエッセイを届けます。

聡乃学習 / 小林聡美

紬織の展覧会を覗いたら、期せずしてこれからの生き方、暮らし方を考えてしまったり、仕事でダンスをしなくてはならなくなり、その練習で2日連続異なる場所に怪我をしてしまったことにより、なぜか生きているすばらしさ、食い意地を張れる日々の幸せをかみしめてしまったり、小林聡美さんの、毎日の学びの日々を綴ったエッセイ集。

へえ~、と思ったり、うんうんそうそう、と同意したり、なるほどそう考えるか!と感心したりするこの本の中に、『五十過ぎたら順不同』という1章がある。これは、聡美さんの尊敬する俳句の先輩がおっしゃった言葉だそうで、彼女は最初、「五十過ぎたら、先輩後輩もないから、先輩を気にせずおおいにやりたまえ!」ということだと思っていたが、実は違ったそうだ。読み進めてわかる前は、私もまったくその意味だと思った。しかし本当の意味は、「五十過ぎたら倒れる順番は年齢に関係ない。用心用心」ということだったらしい。五十過ぎたらもう、誰の身に何が起こっても不思議はない、ということなのだ。確かに。

我が母親は現在後期高齢者(この言い方すると怒る)真っ只中。長年使って来た身体のあちこちが、痛かったり、動かなかったり、上がらなかったり、見えづらくなったり、聞こえづらくなったり……そんな母が数年前に、インプラントを歯医者に勧められた時、
「○〇(私のこと)みたいに若いうちならまだしも、あと、何年使うかわからない歯に、そんな高いお金を使うなんて……明日ぽっくりいっちゃうかもしれないし……元を取れないじゃない……」とブチブチと言っていたのを思い出す。
「明日ぽっくりなんて、誰だっていく可能性はあるよ。そんなこと言ってたら、何にも出来ないじゃない。元をとってやる!と長生きして使えばいいじゃん」
とかなんとか、家族で話し合いをして、結局やることになったのだが、もう数年、快適に食事を楽しんでいる。あれは、ホント、やってよかったと思っている。

他にもいろいろと不調はあるが、その中で、膝はもう何年も前から大きな悩みの種で、下りの階段は痛くてゆっくりしか降りられない。普通の道でも長時間歩くと痛くなってもうだめだ。なんとかしようと、スポーツクラブに通いトレーニングも欠かさない。痛くて厳しいパーソナルトレーナーの言うことだってちゃんと聞く。週に一回病院に行って、水を抜いたり、注射をしたりと、いろいろと頑張っているのだ。

スポーツクラブと言うのは、同じ悩みを持った仲間たちが、お互いに励まし合ったり、情報を共有したりしたりもするから、1人で閉じこもって悩んでいるよりいいものだと思う。先日、同じように膝を痛めているマダムに、新聞の切り抜きを渡された母。なんでも、自分の細胞を培養して、また戻す、みたいな感じの治療法が、保険適用になったという。
「これ、私たちにいいんじゃない?!」
と言う感じで教えてくれたのだ。

さっそく、いつも通っている病院に意気揚々とその切り抜きを持参した母だったが、気落ちして帰ってきた。手術痛いよ~、リハビリ大変だよ~、と医者に脅かされた挙句、要は、これは若い人の治療で、この年齢の人がやった前例がない、と言うことだった。
「そうよね!考えたら、年寄の細胞を培養して、また年寄の身体に戻したってしょうがないってもんよね!それに、あと何年使うかわからない足に、お金と労力をかけたってもったいないわよね。」
と自虐的に憤慨した後、
「……でも、一瞬、もう一度元気に歩けるようになるんじゃないかと、夢見ちゃったから、ちょっとがっかりしちゃった……」
とひっそりと笑った。

娘としては、どこかに、何か!何かいい方法があるならば、
「あと何年使うかわからない足に費用をかけたって……」
なんて言わずに、元気にザクザク歩けるように、なんだってやって欲しい、と思うのだ。

文と写真・こばやしいちこ

小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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