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物欲より経験欲

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

気が付けば長年の友人、ばかりになった。
中学生や高校生の頃からの付き合いだから、出会ってからの年数も逆算しにくくなっている。
気取った食事をするのだってもうトータルでいったら何回くらいになるのだろう。

背伸びをして入ったお店で、背伸びして美味しいものを食べた。
誰かに連れて行ってもらうような時代とはちょっとズレていたので、
いや、違う、そういうタイプでなかっただけだ。

それでも背伸びをして入ったお店で、「これでいいのかな?」とアイコンタクトを取りながら、食べた料理や飲んだワインは、いつまでも印象に残っていて、
会えば「そんなこともあったよね」と話してきた。

デザートの前に「もう少しお飲みになるならチーズなどはいかがですか?」とか言われた時は、それはどうするのが正解!? とおどおどしたのではなかったろうか。
食事が終わって帰り道、何が一番美味しかったかを話しながら、
「生意気だよねー」と笑い合っていた。

雑誌で紹介されていたお店が、行ってみたら思いのほか狭くて、いや、こじんまりしていて、写真ってダマされるよねーなんて学んだりしたこともあったような。
結果、「隠れ家的なお店に行けた私たちって結構もってるよね」みたいな話をしたりした記憶もある。

もちろん、そんなハレの日が何度もあったわけでもないが、
アルバイトや働いて貯めたお金をそうやって使うことが嬉しかった。
物欲より経験欲みたいなものが強かったのだ。
いや、ただただ食欲か。

先日、そういう生意気で可愛げのあった時間を共有してきた友人と、
美味しいランチをゆっくり食べた。
もうドキドキしなくなっている年齢だけれど、
やっぱり自分たち以外の客は皆、常連みたいに見えてしまうのは変わらない。

サラダのポーチドエッグをどのタイミングで割って食べるかを話しながら、
こういう特別感を楽しめる自分たちでいられることに乾杯した。