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Eテレに魅せられて

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

今、最も好きなEテレ番組を紹介したい。
『言葉にできないそんな夜』(Eテレ/毎週金曜22:00~)

番組は「言葉にできないそんな夜、今宵言葉にしてみませんか。」というゲストのナレーションから始まる。
進行役はスピードワゴンの小沢一敬さん。
毎月、4人のゲストとともに繰り広げられる「新感覚国語エンターテインメント」と番組ホームページにはある。

ゲストは、作家、女優、タレント、ミュージシャンなど、多ジャンルからなる。
皆、それぞれ言葉に携わる仕事という点で共通している。

毎回3つのテーマ(お題)があって、「この気持ち、なんていう?」を考えていくのだ。
よくあるシチュエーションだけど、それをなんて表現するかと改めて聞かれると、
悩ましい。
悩ましいけど、絶対的な答えはないから、それぞれの感性で表現してみるのが面白い。

たとえば、前回の放送では「何をやってもうまくいかないとき」の気持ち。というお題があった。

お題について著名な作家が文学作品の中で表現していた事例や、
有名なミュージシャンの歌詞が紹介される。
それをゲストたちが、これのどこがいい? 気になる? と言い合う。
さすがの表現だと感嘆することもあれば、謎を解く鍵で開けたように分析したりする。

この番組を見ていてスペシャルだなと思うのは、
毎回、ミュージシャンや作家が、そのお題で書き下ろした文章が発表されること。
プロだから当然、ウマイ! とか流石! となるわけだけど、
互いをリスペクトしたり、ちょっぴり嫉妬する感じが、ほとんど私にとっては癒しなのだ。

同じく前回の放送では、作家の村山由佳さんが、ミュージシャンの石崎ひゅーいさんが表現したものを読んで、
小説では到底出来ない文章の運びがあって羨ましいと解説していた。
ああ、その解説も癒しだ。

癒しと書いているけど、それは自分の無知が補われていることをいう。
癒しという言葉を便利に使っている例というわけだ。

番組を見ながら、ふと思う。
この、著名な作家が文学作品の中で表現していた事例をピックアップしている人は、
いったいどれだけの言葉に触れてきた人なのだろう。
何万冊の本を読み、何百万語の言葉を知っている人なのだろう。
気になって、番組終了時のクレジットを一時停止しながら見た。

事例監修のお名前は飯間浩明さん。
三省堂国語辞典の編集委員をされている、日本語学者で辞書編纂者だ。
一時停止した画面に向かって、やたら大きく納得して頷いてしまった。

何度も言うが、私がこのライターという仕事に就いたのは、単純明解、国語が好きだったから。
そしてその理由は、「国語は正解が一つじゃないから」だ。
その曖昧さが嫌だとか、そうは言っても……と言われることもあるが、
この『言葉にできないそんな夜』を見て、いつも「ほらね」と思うのだ。

大好きな番組を紹介したいけど、ちょっと秘密にもしておきたい
この気持ち、なんていう?