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アイスタイミング

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

結婚してからアイスの消費量が増えた。
それまでは、旅先などで食べる以外はあまり機会がなかった。
理由は冷たいものを食べるのが遅い方だったから。
しかし、習慣というものは恐ろしいもので、いつしかアイスの頻度が高いことを気にしなくなり、
これはよくないぞと、一時期は、毎週土曜日はアイスの日、みたいに決めて節制したほどだ。

アイスというと思い出すことがある。
それは、私がまだ子どもの頃だ。
日曜日など休日にごくたまーに父がアイスを買ってこいと私たち兄弟に小銭を持たせた。
徒歩3分くらいの場所にあった駄菓子屋で、キャラクターがついたアイスに目がいきつつも、ジャイアントコーンを購入する。
好きなものを買ってきていいよ、ではなく、アイスならジャイアントコーンもしくはチョコモナカなら買ってきていいという条件だった。
それはそれで美味しく食べていたのだが、心の中では
「いつか自由に自分の好きなアイスを買うんだ」なんて思っていた気がする。
なんと小さく、可愛い夢だろう。ハハハ。

それから数年が経過した。自分で少しは買い物が出来るお小遣いをもらえるようになった頃だろうか。中学生くらいになっていたかもしれない。
家から徒歩5分くらいの場所にコンビニが出来た。店の名の通り、7時から11までの営業だったことを、イマドキの人は知らないだろう。
その存在は新鮮で、コンビニで買い物するのは、ある意味憧れだった。

コンビニと言えば、カウンターでオーダーする揚げ物、スナック類、おでんなどがあるが、その昔、カウンター横ではアイスを販売していた。
フレーバーアイスの代表格、サーティーワンは夢のまた夢、デパートの地下に行かないと売っていなかったので、
サーティーワンみたいに買えるアイス、みたいな位置づけだった。私の中では。

バニラ、ストロベリー、メロン……などのフレーバーに混じって、得体のしれないものがあった。それは、今ではスタンダードフレーバーでもあるチョコミント。
どういう経緯でそれを知ったのか、テレビか何かで見たのか、
本や雑誌で読んだのか、とにかくチョコミントは未知の領域。
だから憧れがあった。
親に言ったところで、アイスはバニラ、でなきゃジャイアントコーンにしておきなさい、だったはずだから、
チョコミントにチャレンジするなら、自分一人でこっそり……そう思っていた。

レジで店員さんにチョコミントを注文する。
その場で店員さんがすくってコーンに乗せて成形する。
そしてたしか持ち帰り用には、モナカと同じ素材のカバーがされた。

自分が味を知りたかったのだから、一つ買えばよかったのに、
なぜか私は3つ購入した。

一人暮らしと思われたくないからピザ2枚買っちゃうとか、お箸2膳もらっちゃうみたいなあれに似ているような感じ?
いやいや、まだ子どもだったはずなのに、なぜだろう。
たぶんコンビニアイス・テイクアウト・チョコミント、どれも初心者すぎて、おかしな気を使ったのだろう。
それにしても×3つって、あの頃の自分に「バカ、バカ、何してんのさ」と突っ込んでやりたい。

一つはすぐに自分の部屋で食べた。
初めてのチョコミントは、一瞬「ウッ」と思ったが、食べ終わる頃には「これ好きー」となっていた。
結果、家族に知られないように冷凍庫の奥に隠しておいた残りの2つも、
気づかれないように数日内に一人で食べたと記憶している。

実を言えばチョコミントを食べる度に
あの時、なんで3つ買ったんだろう、一人で3つ食べたよね?
と思い出していた。
でもこれは誰にも共有してこなかった記憶なので、誰とも共有せずにきたのだ。

おかげて私にとってはチョコミントはちょっと特別、私だけのアイスタイミング。