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滑舌よく言ったという

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

第3子だったので、親が記憶している私の小さい頃の記憶は極端に少ない。
これは末っ子あるあるのようで、この手のハナシをしたら、「妹からまったく同じテンションで同じことを言われたことがあります」と聞いたことがあるほどだ。

私の母にはその自覚があって、聞いても覚えてないと割りと早い段階から言われていた。
そうなると、あとは兄弟を中心に家族が共有しているいくつかの
「幼子ゆえの微笑ましい記憶」がほんの数本あるに過ぎない。

「電車が飛んでる!」はその筆頭だ。
箱根に家族旅行をした時のこと。ロープウェイを待ちながらなのか、
遠目に見てなのかは知らないが、ゴンドラを指さし、大きな声で
「電車が飛んでるー!」と言ったらしい。
周りにいた人たちが思わず笑ったそうだから、
相当大きな声で言ったのだろう。

もし、私が大人でその場に居合わせたとしたら
リアクション大きめに「可愛い~♪」と言ったことだろう。
実際、3歳くらいまでは大抵子どもは可愛いものだし、可愛かったと信じたい。

「電車が飛んでるー!」と私が言って、笑われたということは聞いているものの、
じゃあその時に親はどうしたのか、兄弟はなんと言ったのかは
記憶として記録されていない。
それがむしろ気になるよなぁ。

今でもロープウェイを見ると私はいの一番にそのことを思い出す。
正確には私はその記憶がないのだから、そのエピソードを聞いことを思い出すといったほうが正しい。

2021年4月に開業した日本初、世界最先端の都市型循環式ロープウェイ
YOKOHAMA AIR CABINは、JR「桜木町」駅から、新港地区の「運河パーク」駅の片道630mを結ぶ。
週末だからさぞかし親子連れでにぎわっているのだろうと思っていたら、
列に並ぶ人は私より年上の方ばかりだった。

子どもはもうすでに経験済。
地元の人は意外と乗らない。
歩ける距離だしね。

理由はきっとそんなところだろう。観光メインのこういうものは、灯台下暗し、
地元の人は意外と経験しないまま、数年が経過するというパターンも少なくない。

県外から訪れた私たちは、しっかり観光者気分で体験した。
幼い頃、近未来をテーマに絵を描くと必ず誰かの作品には描かれていたゴンドラみたいな
YOKOHAMA AIR CABINを乗り降りしながら、
「電車が飛んでるー!」って言っている子どもはいないかなぁと実は静かに探していた。