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キーワードは3年振り

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

あまりにも天気が良く、気温が高かった週末の横浜。
きっと考えることは皆同じだろうね……などと言いながら、友人とある場所へ向かった。
10月のことだ。
10月だ、Octoberだ。October Festだ。

チケット購入のために並ぶ列の手前に、別の列があった。
男性ばかりの列だったから、何か別のイベントをやっている?
声優さんとかが出ているのかしら? と思ったら、それは仮設の男性トイレに並ぶ列で、
反対側には女性の列もあった。

チケット購入の列はスムーズに動いている。
アナウンスがあった。
「チケットご購入のお客様は、現金払いの方がスムーズです。お手元に現金をご用意ください」
逆行するようなこのアナウンスの理由はこうだ。
電子マネーでの決済の場合、「Suicaで! Waonで! メルペイで!」と人によってキャリア? が異なるため、それを申告し、設定し、シャリーンとやるには時間がかかってしまうということなのだ。
便利なものは、ここ日本ではまだ場所や条件によっては不便なものでもある。

列が動くなかで、2丁拳銃を客である私たちに向けてくるスタッフがいた。
アトラクションではない。
そのスタッフはスプレーボトルを両手に持ち、
2列で進む人たちに、シュッと一拭きした。
それは本当にガンマンの動きそのものだった。

列が少し過ぎると今度は女性スタッフも2丁拳銃を構えている。
こちらは電子体温計だ。
「OKでーす」そのガンマンは先へ行かせてくれたが、
あの日、あの暑さで平熱だった人のほうが少ないのではないか? と思ったのは私だけではないだろう。
それでもガンマンスタイルで頑張るスタッフがいるから、私たちはイベントを楽しめる。

そして会場に入ると、そこは……。
今、日本が抱えてきたストレスの塊だった。

そんなことを言うのは大袈裟だろうか。
いや、でも思わず写真をフィルムトーンにしたくなるくらい、テント会場内のあの人、人、人の図はすごかった。

同時に思ったのは、「日本にはこんなにビール好きがいるんだね」ということ。
これは友人と同意見だった。
私の周りには、アルコールが苦手な人が多く、そうでない人もビールは飲めないとか苦手という人が結構多い。
私自身はそのどれにも当てはまらないわけだが、
とにもかくにも、ここにいる人は苦手な人ではないわけだ。

グラスは返却時に1000円を返金してくれるデポジット制。
会場内では、空のグラスをテーブルに置いて離席すると、その空のグラスを勝手に持ち出し、デポジット稼ぎをする輩がいるので注意するようにと貼り紙がされていた。

私たちはそそくさと屋外スペースに移動した。
そこも人、人、人ではあったが、青空の下、隣に人がいないポジションを見つけて、
しばしビールを堪能した。

途中、もう一杯を求めてテント会場内に行くと、
バンド演奏が入った会場はさらなる熱気に包まれていた。
定番の曲で、皆、ジョッキやグラスを上に持ち上げて腕を左右に振る。

その光景は「だってさ、3年振りだよ」
「いろいろ我慢してきたよ」
「もうそろそろいいよね」
「今日くらいいいっしょ」
という吹き出しがあちらこちらから出ているようで、
何かの縮図を見た気がした。

本場ドイツのミュンヘンでも今年、3年振りにオクトーバーフェストが開催されたという。
それはそれはすごかっただろう。
よく、ドイツ人と日本人は真面目な国民性という括りで並べられることがあるが、
あの様子を見たら、いろいろ納得できてしまった。

秋は各地でイベントが数多く開催される季節。
今年はどの地域、どの業界でも「3年振り」といワードでにぎわうことだろう。

それにしても、あの会場の様子を見ていたら、
客席での私語は控えるように注意喚起が行われている劇場関係者の皆さまはどう思うのだろうかと頭をよぎった。

正しいとか正しくないとか、良いとか悪いとか、ずるいとかずるくないとか、
いろいろな意見はありそうだけれど、
マナーは携えたまま、我慢は緩められたらいいよなぁとしみじみ思うのだった。