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ローカル線に似合わない

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

映画「ドライブ・マイ・カー」を見に行くために乗った休日の電車。
各駅停車の車内は空いていた。

いくつめかの駅でおじいさんが降りる。
足が悪いようで、杖をつき小刻みにゆっくり歩いて出口に向かった。
おじいさんの近くに座っていた20代くらいの女性も同じ駅で降りた。
二人は家族でも知り合いでもないようで、たまたま同じ駅で降りた。
私は夫と並んでその様子を見ていた。

おじいさんの足元がおぼつかない感じが心配で、気を付けて!と思いながら見ていた。
次の瞬間、ベビーカーを持った夫婦と2歳くらいのお子さんが慌ててそのドアから乗車した。
やや強引な感じがして危なっかしかった。
お子さんはお父さんが抱っこしていたっけな。

おじいさんは無事ホームに降りて、またちょこちょこと歩き始めたのを
走る電車から見た。

車内はガラガラで、その車両のシートに片側には私たち、
通路を挟んで向かい側にその親子が座った。

「あのおじいさんはともかくさ、あの子はもっと早く降りるべきだったよね、アブナイじゃん」
妻が言った。
「〇〇(鉄道会社名)は、ドア閉まるの早いからね」その夫が言った。

一瞬、背筋がゾッとなる。
事実、ドアが閉まるのが早い傾向はあるのだろう。
こっちだって小さな子がいるのだし、安全に素早く乗りたいんだよというのも当然あるのだろう。
でも、「あのおじいさんはともかくさ」のところが怖すぎた。

その後、夫婦は会話を続けていた。
何の話題かはわからないが、夫婦の意見はそこそこ合っているようで、
でも終始何かに対してブーブー言っている感じで、のどかなローカル線に似合わない。
マスクのせいと、電車の走行音が大きいせいもあるだろうが、
その夫婦の声は結構大きくて、それもやっぱりのどかなローカル線に似合わない。

2歳くらいの娘ちゃんはとても可愛らしい。無邪気な顔で、キョロキョロしているさまは
のどかなローカル線に似合っていたのがなんだか救いだった。

LINEの着信があった。
「文句が多い母ちゃんだね。」
夫からのLINEだった。
そこからいくつかやりとりして
「でも子どもはかわゆいな。途中で似てくる可能性はあるけどね。」
という余計なお世話を無言でやりとりしているうちに、電車は私たちが降りる駅に着いた。