日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
東急シアターオーブで上演中のミュージカル『メリー・ポピンズ』を観た。
ここでは、作品のレビューは置いておいて、上演後に行われたアフタートークでのお話。
この日、ソワレの上演後に行われたアフタートークに登壇したのは、
メリー・ポピンズ役の濱田めぐみさん、ウィニフレッド・バンクス(バンクス夫人)役の木村花代さん、ロバートソン・アイ役の石川新太さん。
そしてこのアフタートークの進行役は、ブーム提督/頭取役のブラザートムさんだった。
実は、観劇日を決めた理由は、ご一緒したMさんが「この日はブラザートムさんが出るアフタートークがついているよ」とイチ押ししてくれたからだった。
二人でもちろん舞台を十二分に楽しんだ後、座席でそのまま待つこと数分。
再び幕が開くと、すばらしきセットの前に椅子が4脚、それぞれの椅子の足下にはお水がセットされている。
最初に登場したのは、進行役のブラザートムさんだ。
海の向こうの映画賞のステージ上では、コメディアンが平手打ちをくらう場面が世間をザワつかせたが、ミュージシャンとして、コメディアンとして、役者として、数々の舞台に立ってきたブラザートムさんの仕切りは、ものすごく温かくて、楽しくて、格好良かった。
まず、何が格好良いかといえば、全く力が入っていないところ。
始めますも、よろしくお願いしますもなく、拍手の仕切りなんかで軽く遊んで始めた。
次に登場したのは、若手の石川新太さん。力みのない感じで、トムさんが名前をいじったりする感じに、なんなくツッコミを入れていたりして、若くても舞台経験豊富な感じがステキだった。
続いて登場したのは、木村花代さん。白のロゴTにレーシーなモーブピンクのロングスカートで愛らしい雰囲気。でも喋る感じはこれまた、軽快かつ力が抜けていてお茶目だ。
3人は立ち話をしながら、主役の濱田さんを待つ。
この間も、全員揃ってから改めて自己紹介をして、さあ質問! みたいにせずに、楽屋裏で話しているみたいなテンションで話しを進めている。
もちろん皆さん、手にはマイクを持っているし、観客はほとんど帰っていないので、
それはアフタートークの始まりには違いなくて、質問内容や段取りもしっかり事前に把握されていることはわかった。
でも、ここまでの間、いわゆる舞台の後のアフタートークの型に1㎜もハマッていなくて、
もう私はニヤニヤが止まらない。
最後に濱田めぐみさんが着替えを終えて登場。
こちらは黒ロゴTにスキニージーンズでステキ。
そして、「いや、実は話し始めてたんだけどね……」という感じでそのままトークを続けていった。
途中「座りましょうか?」と石川さんからだったかな? 声かけがあったが、
トムさんは、「え、いいよ」と言って座らなかった。
トムさんがそう言うから、結果、誰も座らなかった。アフタートークの時間は、15~20分程度だ。
考えてみれば、ほぼ出ずっぱりの濱田さんや木村さんは特にヘトヘトだったろうし、
ファンの方の中には「座らせてあげてよーーーー」と思ったり、つぶやいていたりする方もいるかもしれないけれど、
私は、それすらもトムさんのショーマンシップを感じてしまい、もはや感動に近い思いだった。
トークの話題は、好きな場面や一番印象に残っている好きなセリフなど、
定番かつ、ファンも聞きたいネタだ。
インタビューなどでも散々聞かれている質問かもしれないけれど、
4人とも、本番で演じているからこそ感じているエピソードを交えて答えてくれるのが嬉しい。
歌もダンスも衣裳も仕掛けも、気になるシーンがたくさんあるからこそ、こういう質問に答えてくれることで、観客も「うんうん、私もそこが印象的だった」「そう、そのセリフが最高だった!」と一緒に反復できる感じがいい。
で、この間、トムさんが見せた温かさがある。
それは、自身の感想を織り交ぜながら、アンサンブル、スタッフ、子役の方々に向けて、
客席からの拍手を煽ったところ。
これがまたごくごくスマートかつ、納得の流れなのだ。
観客である私たちは、拍手したい気持ちに満ちている。
でも実は、カーテンコールは写真撮影OKというサービスがあるので、本来の拍手のボリュームが演者さんに届いていなかったのだ。
私は、スマホがあまりうまく使えず、途中から拍手専門に切り替えていたけれど、
もしかしたら、そんなことも踏まえていたのかなと思う。
もちろん、アンサンブルの活躍があってこそ、大掛かりな装置やたくさんの衣裳を扱うスタッフがあってこそ、ステージは成り立つのだということに心底リスペクトがあるからこその拍手頂戴!だったと思う。
なんて温かくてスマートなのさ。
そんなこんなであっという間に終わったアフタートーク。
締めは段取り通りだったのかもしれないけれど、あたかも今、思いついた……みたいな流れで、それもまたサラッとしていて、それでいてちゃんと『メリー・ポピンズ』らしかった。
私もMさんも、ウォンビーローングな頃に大活躍していたブラザートムさんを知っていたので、観客を楽しませつつ、出ている本人たちもちゃんと楽しむツボを押さえた感じに、
やっぱりニマニマが止まらなかった。
このアフタートークの進行のすばらしさは、私の中で濃い記憶として残りそう。
もちろん、素晴らしい舞台があってこそ、なことは間違いない。