自分らしさ、暮らしやすさを提案するらしく・おうちと整理研究所 主宰の柳澤とも子が、夫婦で手塩にかけて作る庭と植物についてつづるガーデンフォトエッセイ。
今年の夏は、梅雨らしい梅雨がほとんどなく、そのまま息をつく間もなく真夏に突入してしまったような感覚。朝から気温は高く、日が傾いても涼しさは戻ってきません。
そんな極端な暑さに、植物たちも少し戸惑っているようです。毎年この時期には鮮やかな緑で目を楽しませてくれる芝生が、今年はところどころ枯れていて、かなり疲れているようです。カツラの葉も西日側の葉が萎れ始めています。早くも夏バテ気味。丈夫さがとりえのミントでさえ、いつものように元気に顔を出してはくれません。
こうして水不足と暑さのダブルパンチに悩む植物を目の当たりにすると、改めて「梅雨」という季節がもたらしてくれる水のありがたさに気づかされます。雨はうっとうしいものではなく、自然のリズムの中で大切な役割を担っていたのだと、身にしみて感じています。
とはいえ、悪いことばかりではありません。昨年は実がひとつもならなかったブルーベリーが、今年は青い粒をたわわに実らせ、うれしい収穫の喜びをくれました。また、10年近く植わっているのに元気がなかったフェイジョアが、今年は目に見えていきいきと葉を茂っています。自然の機嫌には波があることを感じるとともに、予想外の喜びはなおさら心に響きます。
そしてもうひとつ、今年特にうれしかったのが、長年頼りにしてきたパーゴラのシェードをつけなくても、緑のカーテンだけでウッドデッキが快適に過ごせていること。以前、風に揺れるシェードの涼しさを書いたことがありましたが(こちらの記事)、今年はその役目を植物たちが担ってくれています。自然のチカラに頼ることの心地よさを、しみじみと感じる日々です。
こうした庭の小さな変化を眺めていると、整理収納にも似たところがあるなと思います。
たとえば、何度置き場所を変えてもしっくりこなかったキッチン道具。よく使うからとコンロ脇に置けば油はねでべたつき、引き出しにしまえば取り出すたびに小さなストレス。そんなことを繰り返しながら、ある日ふと棚の一角を空けて置いてみたら、出し入れも掃除も楽になり、「ここだ!」と空間と道具と私が調和する感覚。植物が環境に合う場所を見つけて根づくように、モノもまた、自分に合う場所に出会うとすっと馴染むのだと感じます。
思い通りにいかないと感じるときもあれば、時間をかけてようやく整い始めるときもある。水が足りずに元気がなくなる植物のように、モノも人も、環境や流れによって変化します。だからこそ、完璧を目指すより、今の状態を観察して、柔軟に対応していくことが大切なのかもしれません。
自然のゆらぎに寄り添いながら、日々のくらしと向き合う。この夏は、そんな整理のあり方を教えてくれている気がします。

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