自分らしさ、暮らしやすさを提案するらしく・おうちと整理研究所 主宰の柳澤とも子が、夫婦で手塩にかけて作る庭と植物についてつづるガーデンフォトエッセイ。
12月に入り、庭のもみの木に毎年恒例のイルミネーションを取り付けました。
もう10回近く続けている冬の作業ですが、今年は少し夫のテンションが上がっていました。
娘が学校で友達から「今年はやらないの?」と聞かれたらしく、なんだかほっこりです。夫がずっと口にしている“もみの木の家”と呼ばれるようになるという冗談みたいな願いが、少しずつ周りにも伝わっているのが少し可笑しくて。
oplus_34ただ、木の成長は喜ばしい一方で、作業は年々大変になってきました。
今年はついに根元からでは木の先端に手が届かず、2階の窓から枝に向かって飾り付けをすることに。脚立に乗っていた頃が懐かしいほど、もみの木は大きく、立派に育ってくれました。
夕方、空が群青色に染まるころスイッチを入れると、一気に庭の空気が変わります。
冷え込みの厳しい冬の空気の中で、飾られた灯りが静かにまたたき、木全体がふわりと浮かび上がるよう。寒さも一瞬忘れてしまうほど幻想的で、まるで庭が小さな物語の舞台になったかのようです。
年々作業は大変になっても、この光を見ると「今年も飾ってよかった」と心から思います。家族の季節のしるしとして、もうすっかり我が家に根づいた習慣なのだと感じました。
そんなことを考えていると、整理収納のことにも少し思いが及びます。
暮らしの中で続けている習慣は、最初は小さな試みでも、積み重ねるうちに家族の「あたりまえ」になっていきます。
例えば、帰宅したときにバッグを置く“定位置”を決めていると、いつの間にか家族もそこに置くようになり、散らかりにくい流れが自然と生まれます。
もみの木のイルミネーションが、周囲の人にまで「今年も楽しみ」と思われる存在になっていったように、暮らしの小さな整えごとも、続けていくことで少しずつ周りに良い変化を運んでくれるのかもしれません。
冬の透明な空気の中で輝く光を眺めながら、そんなことを静かに思った夜でした。
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