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11月23日(火・祝)、かぶこ主催のオンラインイベント「あれも小道具?これも小道具!」に参加しました。
これは親子を対象にしたZoomを利用したオンラインイベント。“歌舞伎の卵をヒヨコに!”をキャッチフレーズに展開する「かぶっこっこ」では、小さい頃から古典芸能に気軽に楽しく触れる機会を作るべく、これまでオリジナル人形劇やぬりえなど、さまざまなワークショップを開催しています。
ではイベント当日を振り返ってみましょう。
この日のテーマは歌舞伎で使われる小道具が主役。藤浪小道具株式会社の近藤真理子さんを講師に迎え、「そもそも歌舞伎でいうところの小道具とは?」からお話がスタートしました。
小道具と聞くと刀や提灯のような小ぶりのものを思い浮かべますが、実際は小さいものだけじゃないのだそう。「お引越しで持って行くものは小道具、それ以外は大道具」と言えばわかりやすいそうです。つまり、箪笥のような家財道具や草履や下駄も小道具の範疇とのこと。
次に実際の歌舞伎の演目、有名な『仮名手本忠臣蔵』の五段目で使われている小道具を紹介。登場人物は早野勘平と斧定九郎。お軽(おかる)と共に、お軽の故郷へと移り、今は猟師となって生計を立てる勘平。彼の持ちものは火縄銃、小刀、わらじに蓑と笠。定九郎の小道具は刀、雪駄、そして財布です。イノシシと間違われ勘平に銃で撃たれたため、血がついたバージョンの財布もあります。
オンラインなので手に触れることは出来ませんが、主宰で進行役の関亜弓さんが、実物を見せながら重さやつくりを細かく紹介してくれました。「リアルに見えるように、でも舞台上で使いやすいように、小道具にはさまざまな工夫が凝らされているんですよ」と解説の近藤さん。
登場するイノシシも小道具の一つです。そこで、実物を詳しく観る前に、イベント参加者に配布されたチラシを使った折り紙タイムが設けられました。
チラシの中には、イノシシらしき茶色の折り紙と、人型の絵が描かれています。山折り、谷折りを番号順に折り進めていくと、イノシシが完成。一方の人型は、切って折り立てると人が手を伸ばして上半身を折っているスタイルになりました。
そう!これは、歌舞伎でイノシシを演じる人の体勢なのです。この人型にさきほど折ったイノシシをかぶせると、前脚は作り物、後ろ脚は人間の脚のイノシシになります。
お子さんたちより折り紙に没頭してしまったのは、ここだけの話ですが、折り紙が出来上がった頃には、実際に舞台で使われる張り子のイノシシが画面いっぱいに映し出されました。
あぁ、イノシシが登場する歌舞伎を早く観たい! と思った参加者は多かったのではないでしょうか。
一つでも小道具の仕組みを知っていると、歌舞伎を観る楽しみが増えそうです。特に歌舞伎に出てくる小道具は昔の日常、今では非日常のアイテムが多いので、どう使ったのか、どんな身分の人が使っていたものなのか、材質は何か、などなど疑問と興味はいくらでも生まれるに違いありません。当日イベントに参加していた方たちも目をキラキラとさせて普段はあまり目にする機会のない小道具の数々を画面越しに見ることができました。
最後に、本イベントを主宰した関亜弓さんに、イベントの感想と今後の抱負をお聞きしました。
「大人になると色々な知識があるせいか、歌舞伎や伝統芸能と聞くと心の準備をしてしまいがちですよね。お子さんは面白そう!というアンテナに引っかかったものには、何にでも飛びついてくれます。大人の方も、そういった時代を思い出して、まずは何も考えずに参加していただきたいですね。赤ちゃんって、気になるものがあると考えるより先に、まず触って、口に入れてしまうんです。その姿勢を見習って(笑)かぶこっこでは、子どもも大人も感覚的に歌舞伎と触れ合える機会になったらいいなと思います。」
歌舞伎は興味があるけれど、敷居が高い。とはよく耳にする言葉です。「難しそう」と先入観を持つ前に、小道具や衣装など、「歌舞伎になくてはならないもの」の一つに注目してみるのが良さそうです。小さなお子さんだけでなく、大人向けにもこうした体験の場があるとぐっと距離が縮まりそうですね。