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Vol.23『更待何時』―更にいずれかの時をか待たん

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昨年の秋に母が突然、逝ってしまってからというもの、以前にも増して「今のうちにやっておきたいこと」が多くなった。

いつも急ぎのことや対面の仕事を優先し、重要なことや大事なことは後回しになりがちで、「もう少し時間ができたらやろう。」「今日は疲れたから、今度やろう。」そんな言い訳を、いったいどれほど重ねてきただろう。

もともと慌ただしくしたり、予定をぎゅうぎゅうに詰め込んだりすることが苦手で、一日にできることはかなり少ない方だ。それだけに、やり残していることを思うと、気持ちばかりが焦ってしまう。
今やっておきたいこととは、「やろうと思いながら手を付けてこなかったこと。」
たとえば、年会費がかからないからと何となく持ち続けているクレジットカードの解約。以前は使っていた商品があり登録したままになっている会員システムの退会。溜めたまま入力していないデータの整理。
他にも、終活とまではいかなくても、身の回りを棚卸しするために整えておきたいことがいくつもある。

母の死後、痛感したのは「わからないことがあっても、もう聞けない」という現実だった。
遺品を整理しながら、「これって〇〇?」「どうしたかった?」「他にも〇〇あるの?」と聞きたいことが次々と浮かぶ。しかし、それを確かめることはもうできない。
だからこそ、もし自分に何かあったとしても、残された家族が最低限は困らないようにしておきたい。そんな思いが、強くなった。
実は、もう10年以上前にエンディングノートを書こうとしたことがある。
病気になった際の治療のこと、葬儀のことなど、さまざまな項目が並び、正直、見ているだけで面倒さが先に立ち、結局は銀行口座やクレジットカード、生命保険の明細をまとめただけで終わってしまった。
そもそも葬儀のことなどはよくわからないし、好きにしてもらって構わないとも思っている。あのときは、書きたい内容が自分には合っていなかったのかもしれない。

今回は違った。
実際に「これ、知りたかった!」と思うことが具体的にあったからこそ、自分のこととして考えられた。
「きちんと完成させなきゃ」と思うと手が止まってしまうので、まずは思いついたことを項目だけ書き出し、すぐに書けるものから少しずつ書き足していく方法にした。
自分がどうしたいかよりも、残された家族が「あったらすごく助かる」と思う情報を書いていく。その作業を通して、自分の心が少しずつ落ち着いていくのを感じている。

『更待何時』
更にいずれかの時をか待たん。
今の言葉にするなら、「今でなくて、一体いつするのか。今すべきである」という意味だ。
道元禅師(1200~1253)が中国で修行中、一人の老僧の典座(食事を作る役)から教わったことを書き記した『典座教訓(てんぞきょうくん)』の中の言葉である。

この先、いつ何があるかなんてわからない。
だからこそ、今の自分の役割としてやらなければいけないこと、やりたいことを、しっかり、そして楽しくまっとうしたい。
自分の人生を、誰かに任せたり、先送りにしたりはしない。
そう思いながら、今日もまた、今の自分に必要のないものを一つずつ、整理している。

書・文・松杏
子供の頃から文字を書くのが好き。小学生で習っていた書道を40歳過ぎて再開。文字の美しさ、墨の表現力に魅了されている。
書と整理収納の共通点は余白とバランス。

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