Tea and・・・ PR

ちょっと不思議な取っ手のはなし

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紅茶コーディネーターのイノチカが、さまざまな角度から紅茶と共に過ごす時間をご提案するオリジナルエッセイ。

好きなのは紅茶を愉しむしあわせな時間と空間。
一人の時もあれば、大切な誰かと一緒の時も。自宅をはじめ居心地の良い場所でのTeatime。
私の人生の中で、紅茶と紐づく記憶は、いつもしあわせと結びついています。
暮らしに紅茶を取り入れて、日常にもっともっとしあわせな時間を増やしていくことができたなら……。
紅茶にまつわるあれこれを綴ります。どうぞ紅茶を片手にお付き合いください。

《Tea and・・・ちょっと不思議な取っ手のはなし》

先日、友人が横浜に来てくれたので、観光地にあるカフェでお茶をしていました。
初めて行くカフェでしたので、私は紅茶をお願いしたのですが、なんと取っ手の無い大きな器にたっぷり入って出てきました。
ちょっと意表を突かれてびっくりしたのですが、こんな出会いはとても楽しい!

時々言われるのですが、いつも美味しい紅茶を飲んでいると、お店で飲むのは嫌ではない?と。確かに明らかに美味しいとは言い難い紅茶を出されることもありますが、紅茶専門店ではなくても最近は比較的美味しい紅茶を出してくださるお店も増えてきました。
メニューにある紅茶の種類をみて、オリジナルブレンドなど、初めての味を試したり、どんな器で出てくるのか、ポットやティーカップも私のお店での楽しみなのです。
お店独自のこだわりもあったりして、お店の方の想いを感じられるひと時でもあります。

取っ手の無い器で紅茶を頂きながら、ふと紅茶にまつわる歴史を思い出しました。
元々、茶は東洋の神秘薬として日本や中国の茶文化が16世紀後半にヨーロッパに伝わり、貴族たちの間で広がり、独自の文化発展を遂げたもの。
当初は緑茶が主でしたが、大変高価でもあったため、王侯貴族の社会では権力の象徴として、見せびらかしたり、人々のもてなしに利用されていたようです。

今ではヨーロッパは紅茶が主流ですが、そもそも、紅茶は中国の武夷山・桐木(トンム)村というところで偶然にできたといわれています。桐木村の製茶工場で緑茶の製造過程で、葉が傷つき失敗したものを、あえてしっかり揉むことで酸化発酵させて独特の香りの紅茶ができたとのこと。
イギリスの水(硬水)では、緑茶よりも紅茶の方が美味しく淹れられたため紅茶の方が人気になり、中国では輸出用に紅茶を生産していったという歴史があります。
その後、ヨーロッパの各国も植民地での紅茶の生産に乗り出しました。

そもそも茶は美味しい飲み物ということよりも、健康に良い薬としての意味合いや異国の厳かな飲み方、専用の茶器や道具までも備わっていて、儀式的な意味合いも持ちあわせていたため、イギリス人たちには憧れと同時に崇拝や異形の念も生まれていたようです。

ということで、初めは東洋文化にのっとり、取っ手の無い茶器に入れて飲んでいたよう。
東洋の真似から入った飲み方も、茶器に熱湯で淹れた茶は熱すぎて飲めないため、ソーサーに移して、その皿からズズズッと音を立てて飲むという不思議な飲み方が正統な飲み方として伝わっていたようです。
まさに日本の抹茶を頂く時に音を立てて、空気とまぜながらいただく飲み方ですね。
実はこの飲み方は酸素を一緒に吸い込み口の中で混ぜることで、渋味をやわらげ、甘味を感じやすくするといった科学的に理に適った飲み方のようです。
エスプレッソコーヒーを泡立てたりする理由も同じと言われていて、先人たちは自然とおこなっていたのですね。
この時代、何がどのように伝わっていたかは定かではありませんが、少なくともお抹茶や緑茶は紅茶ほど高温で頂くわけではないですし、西洋の磁器に比べ陶器の方が熱の伝わり方もゆるやかなので、取っ手が無くても大丈夫。きっとイギリス人たちは東洋の人たちは熱くないのかな?と不思議に思っていたのかも知れませんね。
その後、持ちやすいように取っ手がついたティーカップが生まれ、ソーサーに移して飲む飲み方は次第になくなり、今のスタイルに落ち着いたようです。

私たち日本人はお茶を飲む時、今でも取っ手の無い湯飲みで飲みますが、これがまさに文化として引き継がれていることなのかなとも思いました。

そろそろ紅茶のお代わりはいかがですか?
年末年始で、日本の伝統文化にも触れる機会が多いかと思いますが、その成り立ちや歴史にも少し想いを馳せることで、新たな発見があるかも知れませんね。

文・イノチカ

ライフイメージコンサルタント・ 整理収納アドバイザー・紅茶コーディネーター。
紅茶好き。でも、どんな暮らしをしたいのかを模索する中、理想の暮らしを手に入れるためのゆとりを創り出す整理収納と出会い、本当に好きなのは紅茶を愉しむ時間と空間だと気づく。私にとってTeatimeは小さなしあわせを感じ、人生の大切なことに気づかせてくれるゆとりの時間。今日も紅茶を片手にしあわせなひと時を過ごしている。