映画の中にはさまざまな人生や日常がある。さまざまな人生や日常の中には、整理収納の考え方が息づいている。
劇場公開される映画を、時折、整理収納目線を交えて紹介するシネマレビュー。
気が付けばここのところ邦画ばかり観ている気がする。
気になっている作品は山ほどあるのだけど、「夫婦で出かける」の候補の中に、「映画」があって、洋画の趣味はまるで違うので、結果、邦画ばかり観ている気がする。
そもそもドラマが好きだし、日本映画ガンバレ! だしね。
さて、今回は大ヒットしている『ファーストキス 1ST KISS』
出演/松たか子、松村北斗
脚本/坂元裕二
監督/塚原あゆ子
なんかいろいろ揃い踏み。でも揃っているからこそ、期待値はあがる。
公開から少し時間が経過していて、評判が良くて、期待値はもっともっとあがる。
そんななか、観た。
カンナと駈(かける)は結婚15年。互いを思いやることが出来なくなり、二人は離婚を決意する。離婚届を出すというその日、「いってらっしゃい」も言わない朝。駈は事故で帰らぬ人となってしまう。離婚届は提出されず、カンナは夫の死亡届を出すことになる。
ある夜、カンナが運転していた車が首都高のトンネルをくぐると暑い夏の日にタイムトラベルしてしまう。それは、二人の始まり、若き日の駈と出会った場所だった。現在のカンナと20代の駈が出会ったことで、カンナは彼を失わないためのトライを始めるのだが……。
観た。そして、やっぱり良かったのだ。うん、良かった。
なにが良かったか、書き出しちゃおう。
いつもよくやる全部出し。
松たか子さんが良かった
・声。または声色
特に力が入っていない時の声に血が通っていた。
なんとなく矛盾しているけれど、つまり人間らしさっていうのかな。台詞なのに台詞っぽくないし、絶対いないけど、ちゃんと隣の部屋に住んでいそうなのだもの。
・コメディエンヌぶり
ダサい動きがいっぱい出てくるのだけど、それがどれも愛らしいし、あざとくないし、クッククックと笑っちゃう。声のトーンもこの中のひとつ。
特にフリスビーを手にしている瞬間、最高だった。
・年齢差
タイムトラベルした先で、松たか子さん演じるカンナと、松村北斗さん演じる駈には歳の差がある。これをまたなんとも憎らしい具合にいい具合に見せている。
いや、実際にはそうそういませんよ、松さんみたいに美しい40代。お肌もぴかぴか。
けれど、ちゃんと歳の差はあるけど、ちゃんと恋に落ちるよね、という違和感のなさ。
松村北斗さんが良かった
・声。または声色。
特に15年後の駈の声は、ちょっとガサッとしていて、年齢を感じさせていた。
やりすぎって思う人はいたかな。でもそう聞こえるように演じたというより、そう感じさせるように発声している、そんな気がしたのだ。
・偏屈ぶり
偏屈というか、変わりもの。設定されているキャラが濃いので、もしかして演じやすいのかもしれない。でもそのキャラクターごと「うん、恋に落ちるよねー」と思わせる絶妙さ。
普通の人の役、しばらく来ないかもしれない。それくらいこの役そのものだった。
カンナのお仕事が良かった
・カンナのお仕事は美術装飾関係。しかも舞台美術とかだよね。2.5次元系の舞台のシーンが出て来たし、トラブル発生でホールに戻ったり、楽屋裏が出て来たり。
そんなの私、大好物じゃないの。
部屋には、スケジュール書き込める現場っぽいホワイトボードがあったりしたのも良かった。
カンナの部屋が良かった
・二人が夫婦として暮らしていた時の部屋、カンナだけになった部屋。
その乱れ具合のリアルさは、整理収納アドバイザーなら「わかるー」ってなる人がきっと多いはずだ。自分だけならどうでもいいってなってしまう、部屋が乱れるなんて、モノが捨てられないなんて、結構あっという間にそうなってしまうものだもの。
そして、二人で暮らしていた時の、モノは決して少なくないけれど、二人の好きなものが幸せに配置されていた感じもすごく「わかるー」だった。
里津のきっぱりした台詞が良かった
吉岡里帆さん演じる里津は、駈に想いを寄せている教授の娘。
後半、カンナと直接対峙するシーン(実際には間を空けて横に並ぶ)があるのだけど、その時のきっぱり、さっぱり、はっきり、しっかり相手に言葉をぶつける感じがすごくよかった。
それがカンナの力、振り絞る力になるから。
吉岡さん、脚本家からの信頼が厚いのだろうな、などと思った。
映画の公式サイトを見ると、どうやら細かい仕掛けや、何度も観た人が気づいたあれこれがあるみたいだ。
#解像度があがる映画ファーストキスのはなし
なんていうのもある。観てから読むか、読んでから観るか……のやつだろう。
私は前者。だから、この後、ちょこちょこのぞいてみることにしよう。
さて、平日の午前中に、仕事が休みだった夫と一緒にこの映画を観た帰り、
掛け布団カバーを買いにショップに寄った。
必要に迫られていたのは夫なのだが、どうせなら私も新調しようということにした。
二人で色違い……とかにするんだと思っていたのだが、そういう品揃えがなくて、
結局それぞれが気に入った柄を購入した。
夫がボタニカル柄、私はグリーンのストライプ。色味はなんとなく似ているけれど、柄も布の素材も違う。
映画「ファーストキス 1ST KISS」を観た後じゃなかったとしても、そんな感じだったような気もするけれど、観た後だったから、という気もしてちょっと愉快だった。
そして昼ごはんは、有名中華チェーン店で餃子を食べた。
これはまったくの偶然。だって出かける前に夫がその店のメニューをスマートフォンでチェックしていたのを私はこの目で見ていたもの。
映画と暮らしがくっついて、なんだかいいなと感じた。