スイカと腹筋

いつもの義母宅デイが誕生日と重なったこともあって、
先週はお暇をいただいた。
2週間ぶりというだけで、ずいぶん久しぶりに感じたことで、いかに毎週通いが近年のルーティンになったいたかに気づかされる。
それなりに張り切って義母宅を訪れた。

外は暑かったが部屋の中は除湿がきいていて快適だ。
障子は開いていて、ちっともエコではないけれど、体調管理優先だから仕方ない。

昼食を一緒に食べ、洗濯をし、買い物に行き……とくるくる回る。
義母は昼間寝る時間が増えた。
寝起き状態でボーっとする時間も多いようだ。
私は会話が弾まなくて、だいぶ楽しみが減ってしまっている。

1週間空いただけでも、なんだか老化が進んだように感じてしまうのは、季節のせいなのだろうか。
一つ歳をとったのはこちらの方なのにね。

おかずを工夫しても、自分で保存容器から出して盛り付けて食べるという行為からはだいぶ遠のいた感じだ。
季節的な問題もあるので、あまり張り切らないことにする。
ちょうど大好きなトウモロコシの時季にもなることだし。

そんな思いでスーパーで購入したのは今年初めてのスイカだ。

「お義母さん、あんまり寝すぎると、夜寝られなくなっちゃうよ」
「起きて新聞読もうよ」
あまり調子がよくなかったのか、昼のお弁当の量が多すぎたのか、
声をかけても生返事で、すぐにベッドに横になる。

それからしばらくして、購入してきたスイカをカットして皿に乗せ再び声をかけた。
「お義母さん、スイカだよ！」

コントみたいにすっと起き上がった。
義母は89歳だが、腹筋力が強い。
手をつかずに起き上がる。
足は弱っていて立ち上がるのにはかなり難儀するのだが、
ベッドから起き上がるあの力は、出来れば正確な数値を専門家に測ってもらいたいと思うほどなのだ。
大袈裟ではなく、私より腹筋力があると思う。

スイカという3文字は、義母の腹筋を確実に刺激した。
そして、あっという間に平らげた。

「まだあるけど、一気に食べない方がいいから、薄めに切ったよ」
このメッセージにはいつものように「そうだね」とは相槌を打たない。
スイカの覚醒力のすさまじさよ。

これからの季節、しばらくはトウモロコシとスイカで義母のご機嫌を取りながら、
腹筋を刺激する機会が増えそうだ。