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それも年輪というものか

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。

「バウムクーヘンもらったよ」夕方、そんな連絡がぽろりんと届いた。
現物支給には目がない夫婦である。

夫が持ち帰ってきた、いただきもののバウムクーヘンのパッケージを見て、
記憶が一気によみがえった。
ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベはドイツの無添加バウムクーヘン。
今から11年前、結婚祝いに元同僚が贈ってくれたのがここのバウムクーヘンだった。
「結婚おめでとうございます。これ、ウマイですよ!」
たしかそんなシンプルなメッセージがついていた。

元同僚と言ったが、その人は私より一回りくらい年上だったろうか。
私が勤めていた会社に営業職として入ってきた人だった。

編集と広告営業は、「仲良くケンカしな」みたいな間柄でちょうどいい。
そんなことが言えた時代の少し後だった。
営業は広告主の顔を立て、要望に出来るだけ答えたい。
編集には編集の立場や方針があるから、そこから逸脱するものは作りたくない。
どちらも正解だから意見は活発に交換し、うまくやることが求められた。

私は、その前の職場で広告営業も経験していたため、
自称・営業担当の気持ちもわかる編集だった。
生粋の編集じゃない気がしてそれが実は少しコンプレックスでもあった。

その同僚の営業さんと私が組んでクライアントとの打ち合わせやプレゼンに行くことも度々あり、なかなかのコンビネーションだったと記憶している。
ズケズケと見聞きできる営業と、ソコソコ盛り上げられる編集だった。
見込みがなさそうな営業先の経過や結果を、社内でどう報告するか、昭和感の漂う喫茶店でランチなど食べながら作戦を立てることも度々あった。

退職後は、季節の便りをやりとりするのみではあったが、結婚祝いのバウムクーヘンは、
誰ともかぶっていなくてセンスがいいなと思ったことをよく覚えている。
贈り物に自分が美味しいと思えるものを自信を持って贈るというのは
大人らしいなぁ、いいなぁとも思った。

久しぶりの「ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ」のバウムクーヘン。
こういう気持ちになれるのも、長年変わらぬ味を作りつづけ、同じパッケージを使ってくれているおかげだなぁ。
続けることって尊いなぁと、バウムの味を確かめる前に噛みしめた。