理由あって週イチ義母宅に通っている。
これは、主にその週イチに起こる、今や時空を自由に行き来する義母とその家族の、
ちょっとしたホントの話だ。
義母とのお昼は成城石井のお弁当を利用することが多い。
手ごろな金額であることと、私の最寄り駅で購入出来るのが理由だ。
そのお弁当にコンビニで購入したゼリーかヨーグルト、プリンの時もある……を
デザートにつけると、たいてい
「こんなに高級なものを、お金を使わせちゃって悪いねー」と言いながら
美味しそうに食べてくれる。
お弁当の中身がなんとなく野菜が足りないなという時は、作り置きのサラダなどを
小皿にプラスして出すこともある。
昨日は、固形チーズをオプションでつけた。
私は大のチーズ好きなので、たまにプロセスチーズなんかが食べたくなる。
買い置きしておいたカルシウム入りチーズを出してみた。
そしてアルミを剥いて義母の弁当の玉子焼きの横にちょこんと置くと、
「私、これは食べない」
と間髪を入れずに言った。
実はプロセスチーズは夫、つまり義母の息子も食べない。苦手なのだそうだ。
ピザは大好きなのにね。意味わからん。
そういえば義母はピザも受け付けない人だった。
(「ピッツェリアで週イチ義母宅」参照)
驚く早さで食べない宣言をした義母に
「え、食べないの? チーズ、苦手なの?」と言うと
「ううん、これはね、、、油だから」と言った。
苦手という単語に反応したらしい。義母は「苦手」とか「わからない」「知らない」という類のことを言わない世界の人だ。
わかりやすく言えば自分の否は認めない。
仕事柄、そういう風に生きてきた人なのだろう。
これは今がどうであろうと変わらない。
変わらないことに度々驚かされる。
「油だから」と言ったその口は、ご飯の上の、所々冷めて固まった油も見える牛しぐれ煮をがっつり食べている。
それでもなんでもチーズは受け付けないらしく、
「これ食べたら出しちゃう」みたいなことも言った。
吐かれたら困る。
そんなわけで、そのチーズはすぐさま私が引き取った。
「この親子め、チーズを嫌がるなんて」
と夫に悪態もついてしまったが、一方でなぜチーズが嫌いなのかを勝手に妄想してみた。
義母は中学校教師だった。
給食で栄養はまかなっていたのだろうと息子は言っている。
学校ではたまにプロセスチーズが出たのだろう。
食べられない子もいたはずだが、昔の学校は「残すのは厳禁!」みたいなところがあった。
生徒の手前、残すわけにはいかず、その時に無理無理食べた嫌な思い出がある。
だから、ほかでは一切食べないと決めたのでないか。
義母は中学校教師だった。
チーズが苦手な子は普通にいただろう。私の同級生にもそういえばいた。
無理に食べて、気持ち悪くなって吐いてしまった子がいたのを対処したのかもしれない。
それ以来、チーズが苦手になったのではないか。
義母は中学校教師だった。
そもそも苦手だったチーズを残していたのを、生徒に見つかって
「先生なのに好き嫌いしていいんですかー」と指摘されたのではないか。
チーズが嫌いというより、生徒からの指摘が悔しくて、
以来、チーズがもっと嫌いになったのではないか。
考えるとまだまだ出てきそうだ。
もちろん、単なる私目線の妄想で、ちょっと嫌味が入っているような!?
残念ながら真実は明らかにはならない。
息子に聞いてもチーズが自分と同じように苦手であることは知らなかったようだから、
その理由もわからない。
この日のデザートは、コーヒープリン。
甘くてなつかしくて、あまーいプリンを食べながら
「これ、甘くておいしーね」と言う義母を見て、
「ま、いっか」と今日も一息ついた。