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マイ・ファミリー / 森 瑤子

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アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中から、読者におすすめの一冊をご紹介します。

マイ・ファミリー / 森 瑤子

私は、面白い!と思う本に出会うと、割とその作家さんの本を読み尽くす。学生の頃、森瑤子さんに出会って(一方的に)、夢中になって読み漁った。大人の恋の話など、物語からまず入って、うっとりと憧れ……でも私が何より好きだったのは数多くあるエッセイ。物語が面白くても、エッセイが面白いとは限らない。森さんはエッセイも面白い作家だった。とてもリズミカルで軽妙で、大好きになったものだ。

作家の日常から、有名人との交友録、華やかなパーティー。うっかりドジをした時の話や、ダイエットの失敗談。家族についてなどがあけすけに描かれたそれは、とっても面白い。イギリス人のご主人と、森さんの美しいハーフの3人の娘さんたち。読み漁った私からしたら、とても他人とは思えず、勝手に親戚感。

現実離れした人気作家の日常はとても興味深く、羨望のまなざし……森さんがエッセイの中で書いていたワインを、友人と行ったイタリアンで見つけて、飲んだ時のうれしさ……(そんなに高くない白ワインだったのだが、当時、娘っ子だった私たちにはナマイキなお値段だった)

『マイ・ファミリー』は、題名のとおり、森さんの家族の話が盛りだくさん。そんなこと、そんなに書いちゃったら、絶対、娘・夫たちに怒られるぞ~、と思うような内容だけど、だからか、面白い。たとえば、夫について。イギリス人というのは、「尊厳がダブルのスーツを着ているようなもの」なのだそうだ。そして、その愛する夫と森さんの間に生まれた美しい娘さんたちは、「イギリス人とだけは、絶対に結婚しない」と言っているとか……

娘さんたちも3人もいると、いつも母親である森さんは頭を悩ませている。結婚しても、何かっていうと、とちゃっかりおねだりしてくる長女。喧嘩して、家出(結果的に円満に家出)してしまう次女。進路が定まらず、馬に夢中の三女。この本の中で、3人に文句たらたら、不満爆発の森さんだが、どうしても隠し切れない深い愛情が見え隠れ。当然だ。彼女はとても愛情深い人。バンクーバーに島を持っているのだが、自然いっぱいの島に娘さんたちを連れて行ったら、「何もなくてつまらなーい」と……そこで彼女は翌年プールとテニスコートを作ってあげた。ミキサー車やブルドーザーを島に持ち込んで、そして、プールには水が必要であるから何十トンも買い、想像もつかないくらいお金がかかったらしい。それでも娘さんたちは、ちょこっとテニスをし、プールに浮かんだかと思えば、「退屈でしにそうだー」と……そこで彼女は、地下室にステレオを置き、映画館のかわりにTVとビデオデッキと衛星放送受信用のアンテナを設置してあげたりするのだ。

森瑤子さんは、1993年7月6日に亡くなっている。作品に出会ってしばらくしてから、森さんが亡くなっていたことを知った当時は、憧れの親戚の女性が亡くなったような気持ちで、とても寂しかった。

『マイ・ファミリー』を読んだとき、私はまだ若かったから、ただただ憧れ、その世界に圧倒された。けれど、今、彼女と同世代になって読み直すと、また違って面白い。たとえば、極端で、高額なダイエットをする彼女に、「そんなのお金、もったいないよ」と思ったり、娘さんたちへの対応に、「なんだかんだで、可愛いんだね」と思ったり、同世代の友人に対するような気持にも似ている。

華やかで愉快な人、ちょっとわがままで自分勝手なところもあるけれど、情に厚く、憎めない可愛い人。そんな人かな……とちょっと想像しちゃったりして。

そうか、もう、彼女はいないんだな。ン十年も前から大好きで読んでいた作家さんの年齢を、もうすぐ追い越します。

文・こばやしいちこ
小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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