日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
アートアクアリウム美術館 GINZAで開催中の「夏のアートアクアリウム展2023」に行った。結論から言おう、観たのは金魚ではなく人だった。
それはそうだ、夏休み、お盆期間、都内の涼しい場所。考えることは皆同じだ。
でも行ってみなければわからないこともあった。
いくつかの写真と共に、何がわかったかを綴ってみよう。
「夏のアートアクアリウム展2023」に行こうと提案したのは夫だった。
以前からちょっと興味があったらしい。ちょいちょいその単語が出て来ていたものの、
私はあまり敏感に反応していなかった。
夕方から銀座で用事があったその日、夫はすでにチケットを予約していた。
私が行きたくないと言ったらどうしたのだろうか? まあその辺りは互いの性格を把握した上でのなりゆきまかせでうまくいく。
なにせ私は「シェフのきまぐれサラダ」を食べられるタイプなのだ。
こちらの観劇レビューの冒頭参照。
美術館がある銀座三越 新館9階に出向いた。(美術館は8階だが入場口は9階)
新館9階は、カフェや食堂が入っており、フリーで座れるスペースもあるフロア。
午後2時30分過ぎは人・人・人だった。
並んでアイスを買って、座れるスペースをどうにか見つけて、開場時間までの時間をマンウォッチングをしながら費やした。
チケットは事前に予約購入。当日その予約時のQRコードをタッチして入る仕組みだ。
しかし夫はちょっとの手違いがあり、事前にスタッフさんに確認しなければならない状況だった。
券売機のところにいる細身で小柄な男性スタッフ(ここではAさんと呼ぶことにする)にその旨を伝えると、フルネームと携帯下4桁を伝えて確認してもらうことになった。
Aさんはイヤモニで確認しながら、その間も券売機で当日券を求める人の対応を続けている。
ほんの少し待った後、Aさんから「仮入場」と書かれたパウチカード渡され、「これを入口に出せばそのまま入場できます」と説明を受けた。
これがアイスを購入する前の出来事だ。
指定の入場時間になった後、エスカレーターを降りて、入口へと進んだ。
もうすでに行列だ。入場口の先も人・人・人が見える。
入場改札のところへ行き、仮入場証を手渡しながら夫が事情を説明し始めると
「あっ、こちらからどうぞ!2名さまそのまま入れます」
そういって案内してくれたのは、Aさんだった。「あっ」はさっきの人ですね……という気づきの「あっ」だった。
スタッフさんはいろいろやらなくちゃいけなくて大変だねと二人で話ながらアートアクアリウムの世界へ。
没入感、非現実、アート、いろいろ感じられる工夫やしかけがたくさんあるのだが、牛歩で進まねばならない。どこにカメラを向けても見切れる。
素敵だなと水槽に近づけば金魚は見れるが、水槽のデザインや色とのバランスが見えない。
それを見ようと後ろに下がれば、前方には人の頭ごしの水槽。
仕方がないことだ。
館内は動画も含めて撮影OK。
カメラマンだらけの美術館、なのである。
ちょっとで引きで撮りたい時は一瞬の隙を突く。
撮りたいのか、見たいのか、眺めたいのか、語りたいのか。
それこそ何に優先順位をつけるかで楽しみ方は変わってくる。
薄型長方形の水槽が棚田のように段々と並んでいた。
「金魚の滝」と名付けられている。裏から水槽を見るのも一興という趣向のようだ。
しかし、表からも裏からも見えるのは人・人・人。
さすがに写真に撮るのは断念した。
つづいて進んでいくと、スクエアの水槽が展示台のようにたくさん並んでいる。
ここには順路はなく、皆、思い思いに水槽を上から見たり、横から見たり。
クローズアップして金魚を撮影している人が圧倒的に多かったが、
水槽全体とのバランスの美しさに惚れ惚れした。
金魚の竹林と名付けられた水槽もやはりその水槽の前に並び立つ人、人。
照明の感じでディスコみが出てしまったりもする。
もちろん竹林というくらいだから照明が緑一色になるタイミングもあった。
少し気分が酸欠のようになったのは、人酔いのせいか、ブクブク酸素が送られる水槽をたくさん見たせいだろうか。
展示コーナーが終わると、おみやげのSHOPスペースだ。
図鑑から金魚柄の手ぬぐいやアクセサリーなどいろいろ。
実家へのお土産用にふきよせを購入すべく、レジへ並んだ。
現金レジと電子決済レジ。私は後者に並び、支払いを済ませた。
……と、そのレジを担当していたのはあのAさんだった。
一瞬、引田天功のマジックを見たような気分になり、数秒後、冷静に考えればわかるスタッフワークのことを思った。
それでも私が現金で支払っていたら、三度のAさんには会わなかったわけで、
真夏のアートアクアリウムで何がわかったかと言えば、
「2023年夏、よく働く若者が、この国にはいる」ということだ。
その後、少し早い夕飯をとして入店した中華料理店の海鮮焼きそばに乗っていたカニ爪が
一瞬金魚に見えてしまったことはここだけの話である。