日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
仕事柄、初めての場所に訪れることは少なくない。
降りたことのない駅、歩いたことのない遊歩道、すれ違ったことのない人、そういうものに出会うのは面白い。
けれど、私は実のところチャレンジャーでもないので、ずんずん知らない町を開拓出来ているかといえば、仕事のために目的地を往復するということのほうが多い。
なんかもったいないけれど。
昨秋、初めての場所を訪れた。
東京都小平市。きっかけは、フリーマガジン「ルミエル」創刊号にライターとして参加させていただいたため。
“小平の魅力を旅するフリーマガジン”をキャッチフレーズに、10軒の飲食店と一つの美術館の取材を担当した。
その店の人気メニュー、お店のコンセプト、客層、これから目指すものなど、取材では文字にしない部分も含めてお話を聞き、実際(味やお店の雰囲気、店主のお人柄)に触れるのだ。
過去にはライター仕事で、資料からそういうものを書き起こしたりした経験もあるが、
上記のようなことを知り得ないうえで書くので、それが続くと苦しかった。
実がないと本当でも嘘のように感じてしまう気がしたからだ。
だから現場取材が好きなのだと自覚している。
小平に話を戻そう。
それまで降り立ったことのない街だったが、行く先々で感じたのは人の優しさだった。
何より、皆さん自身が住んでいる街を気に入っている様子がとても伝わってきた。
ほとんど記事には反映しないけれど、取材では、どの店舗の方にも「この街の魅力ってどういうところだと感じていますか?」と訊ねてみた。
大袈裟なことは言わずとも、皆さんそれをちゃんと口にされていた。
自然が豊かであること、人がいいこと、チャレンジができる雰囲気があること、時間の流れがせかせかしていないこと、学生がいること、そうした答えが聞けたのだ。
巻頭の小林洋子市長と小平市観光まちづくり大使の鳳 真由さんとの対談でも、街の魅力について語ってくださっている。
わが街の魅力を考えたり、口にしたりしたことがあるだろうか?
長年同じ市内に暮らしている私は、それを考えたことがあるだろうか?
いざ聞かれたら、言葉にできるだろうか?
案外ない人は多いかもしれない。
好きを見つけると不便も見えてきて、不便がわかると改善を考える。
最初の好きを考えないと、それ以下のことも滞るということだ。
これまた何かに似ているような気がしている。