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ウィメンズマラソン / 坂井希久子

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アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中かにおら、読者すすめの一冊をご紹介します。

ウィメンズマラソン / 坂井希久子

岸峰子は、プロのトライアスリートだった父と、実業団の選手としてトラックを走っていた母の間に生まれた。だからなのだろうか。幼い頃からかけっこが速かった。両親の勧めでちびっこマラソンに出てもぶっちぎりの1位。かけっこの速い峰子ちゃんは、当然のごとく陸上競技を始めた。

しかし、陸上の名門校に進学し、短距離で伸び悩み、中長距離に転向しても、記録はなかなか振るわなかった。勝ちたい。記録が欲しい。ギラギラとした闘志があるのに、走るのが楽しい、と思えなくなりそうな峰子に手を差し伸べたのは、女子マラソンで金メダルを取らせたあの名監督、小南達雄だった。
-あんたマラソンを走ってみないか-
峰子は、全国の高校から選りすぐりのエリートばかりが集められた生命保険会社に入社し、女子陸上競技部の一員となった。小南監督の秘蔵っ子として、監督の厳しい指導にも耐え、期待にもこたえた。他にも数多く在籍する優秀なアスリート達。お互いに応援しあおうという気持ちもあるが、反面、
「彼女が選ばれなければ自分が、彼女さえいなければ……」
という思いが生まれるのも事実。調子の良い選手に思わず「転べ!」と思ってしまい、自分の心の卑しさに愕然とする。でも、それって、なんだか人間くさくて、いいじゃあないか。

尊敬する監督の指導の賜物か、峰子はロンドン五輪女子マラソンの代表となった。
この時期が、小南監督と峰子の蜜月だった。次は金メダルだ。峰子の夢が、日本国民の夢にもなった時、彼女にある出来事が起こる。
妊娠が発覚したのだ……
おめでたいと言えるこの出来事だが、この時の妊娠はアクシデントだ。厳しい練習により、生理もずっと来ていなかったから気付かなかった……代表を辞退するしかなかった。

となると、昨日の友は今日の敵、とばかりにバッシングの嵐。そんなこと言わなくても……と眉を顰めるような言葉を言われることもしばしば。会見をすれば、記者たちから、「堕胎という選択肢もあったのではないですか?!」など、ひどい言葉を投げつけられ、峰子の応援団のようだった世間も一瞬で敵になった。そして、どんなに辛いときも励まし、峰子を理解し、一緒に頑張ってきた監督からも背を向けられ、彼女は表舞台から逃げるように姿を消したのだ。

しかし、走りたい、と言う気持ちは、峰子から消えるどころか、日に日に大きくなっていく。子供を産み、監督から出された条件、東京マラソンを2時間40分以内で走れたら認めてやる、を達成し、峰子は陸上部に戻ることが出来たのだ。

しかし、監督は峰子を指導することはせず、別のコーチにまかせ、また背を向けた。認めてはくれたが、許してはいなかったのか……

ただでさえ、精神的につらい四面楚歌の状況。やる気があるのかないのか読めない、心も通じていないこの初対面のコーチを信じ、肉体的につらい練習に立ち向かわなくてはならない。峰子の再出発は、かなり厳しい始まりとなった。そして彼女のこの挑戦が、彼女自身はもとより、周囲をも変えていく。
「知らないんですか。感動は人を動かすんですよ」
この素敵なセリフを誰が言ったか。是非この本を読んで確かめて欲しい。

実は私は、健康・ダイエットのために走っている。学生の頃、陸上部だった私ができる運動と言えば、走ることしかない。トレッドミルで1日7キロ~10キロ。わりと余裕だった。でもこの小説を読んで、自分のぬるさに気づき、週に一度は外ランニングをすることにした。単純に、わかりやすく、影響を受けてしまったのだ。そして、わりといいランニングコースと言うのは、実は調べればあちこちにある。

道を走るというのはツラい。当たり前だけれど、トレッドミルとは全然違う。初回は5キロでやめてしまい、少し落ち込んだ。でも久しぶりの筋肉痛に、快感も覚えた。筋肉痛って、『運動やった感』がして、好き。今では10キロは走っている。河川なんか走ると、散歩中の可愛いワンコに癒され、景色も楽しめる。もう少し距離を伸ばしていこうと思っている。

従弟にランニングが趣味の若者がいて、家族は「一緒に走ればいいじゃない」とか言ってくるんだけど、
「そういうんじゃないんだよね~。ランニングは、1人でやるものなの。自分のペースがあるし、自分との戦いなの!」
なんて、かっこつけて知った風に言う私。それももちろんあるけど、でも実は、その従弟は学生時代に箱根駅伝の有名な大学にいて、陸上部で箱根駅伝をバリバリ目指していた子だから、スピード的に全然一緒には走れないから、という情けない理由なのだけどね。

文と写真・こばやしいちこ

小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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