アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中かにおら、読者すすめの一冊をご紹介します。
クジラの彼 / 有川 浩
潜水艦乗りの彼とOLの彼女の超遠距離恋愛のお話、航空設計士の女性と航空自衛官の恋
の始まりのお話、自衛官同士のヤキモキするような恋のお話、などなど、6つの恋のお話
が入っているこの本は、難しい恋の進み具合も手伝って、とてもロマンチックなエピソー
ドばかり。
今現在、彼氏がどこにいるかわからないし、彼氏もそれを彼女どころか、誰にも言って
はいけない。帰って来る日もわからない。潜水艦の航海スケジュールは丸ごと防衛機密な
のだ。いつ会えるか、いつ連絡があるかもわからない彼氏をただひたすら信じて待つ。こ
んな試練に耐えられなければ、潜水艦乗りの彼女を続けていくのは無理だ。彼女は辛いだ
ろう……でも、潜水艦乗りの彼も、いつそんな恋愛に嫌気がさして彼女が去ってしまう
か、の恐怖に耐えながら任務を続けるのだからやっぱりつらい。恋愛が長く続くのは難し
いらしい。それでも運命の2人は試練を乗り越えて結ばれるのだ。
ある女性陸上自衛官は、悲しい出来事がトラウマで、「もう同業者とはゼッタイに恋愛
しない!」と決めて、一般人と合コンしまくるのだが、その恋路は厳しいもので、うまく
行かず失恋して、やけ酒して、泣いてばかり。でも彼女が選ぶ男も悪い。なかなかにクズ
ばかりだ。彼女の鍛え抜かれた腹筋バキバキをったり嗤ったりするのだ。そんな彼女に長
年片思いしている飲み友達の自衛官の彼が放った言葉、
「腹筋割れてて何おかしいんだ?こっちゃ伊達や酔狂で国防やってねえんだよ」
がかっこいい。日常で国防なんて、めったに聞くことないもんね。
知らなかった自衛官の世界を垣間見ることが出来るのも興味深いが、これを読んで、そ
うだよ、自衛官だって同じ人間だもの。恋もするし失恋もする。肉体は鍛えられて強いの
かもしれないけれど、悲しければみんなと同じように泣くことだってある。当たり前のこ
とを認識した。一般人同士の恋愛より、その恋路は厳しいのかもしれない。でも、みんな
と同じように人を好きになってしまうのだ。
先日、母と家の近くの古くからある喫茶店でお茶をした。この店は、実は私の小学生の
同級生の実家なのだ。私自身はお店に入るのは初めて。ドキドキしながら入店。なぜなら
、その同級生と言うのは、小学生の時に片思いしていた男の子だからだ。
レトロな扉をカランコロンと開けたら、彼は、いた。すぐに分かった。優しい面影がそ
のまま残っていたから。彼もすぐに分かったらしく、
「久しぶり……40年ぶり」
と言ってくれた。40年ぶり。すごい言葉に二人で笑い合った。一瞬。
バレンタインデーに、勇気を振り絞って、彼にチョコレートを渡したことがある。お返
しにもらったキャンディーが入っていたガラスの容器は、何年か大切に持っていたと思う。
初めて来る私とは異なり、この店に常連の母が、
「あら。そんなに久しぶりなのに、すぐに分かったの?覚えてた?」
と彼に言った。
「わかりますよ。変わらないから。それに……可愛かったから」
とたんにあの頃の恋していた小さな私に戻ってしまって、恥ずかしくて彼の方を見れなく
なってしまった。
小さな私のなつかしい恋のお話も、おひとつ。
小さな頃から本が好き

