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百年法 / 山田宗樹

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アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中から、読者におすすめの一冊をご紹介します。

百年法/山田宗樹

20歳以上になると受ける権利をもてる、『HAVI』という不老化処置を受ければ、人間は老化しない……という近未来の物語。

20歳以上なら、何歳でも。すぐに受けてもいいし、40歳になって受けてもいい。見た目は、処置を受けたときの状態で止まるから、女性なんかは、若くてピチピチな時がいい!ってことで、たいてい若いうちに受ける。見た目だけで言うと、ホンモノの永遠の20歳。男性は、ある程度の貫禄、威厳のようなものを欲しがったりする人もいて、30代、40代になるのを待って受けたりもする。いくつで受けるか、それは本人の自由。

でもそうすると、優秀な人がずっと若いままで、その座に座り続ける。世代交代、なんて言葉は死語。例えばオリンピックなんかは、肉体が若いもんだから、ずっと同じ人が金メダルを取り続けてしまう、なんてことが起こりかねない……ということで、『HAVIを受けた者の同種競技への参加は2回まで』、など、細かい決まりもあったりする。

なんて素敵な未来!永遠に生き続けられるなんて!

と思いきや、いろんな弊害も出てくる。もちろん人口増加による仕事不足や、食糧難。貧富の差が大きく出てくるのもそう。そこで定められた生存制限法。通称『百年法』。

不老化処置を受けた国民は 処置後百年を以て 生存権をはじめとする基本的人権は これを全て放棄しなければならない

つまり、HAVIを受けてから百年後には、安楽死をしなければならない、という法律だ。これに嫌悪感を以て、受けない人もいる。死ぬのを人に決められたくない。HAVIを受けない選択をする。それも権利だ。
面白いのは、HAVIをうけてすぐの20代と、だいぶたった20代は、なんとなく違いがわかるらしい。生きることに倦んでしまうのか、目の輝きが失われるのか。そして人生が長いと、家族関係が変化していく。結婚して子供を産んで育てても、子供が自分の年齢と同じになるのだ、やりづらい。そこで出来た制度、ファミリーリセットなるものもある。50年前に、3回目くらいの結婚で生んだ子供が、今どこで何してるか知らないわ、なんてことはザラにあるらしい。
逆に、友情が世代を超えたりもする……

実はこの本、弟に教えてもらったものなのだ。「本は読んでないわけではない」程度の読書量の弟が、珍しく興奮した面持ちで「この本、読んでみ! 面白いから!」と勧めてきた。せっかくだから、読みましょう。めったにないことだもんねぇ。ふんふん。男の子って(子、って年齢じゃないけど)、こういうお話、好きねぇ……、なんて、斜めに読んでいた私だが、あっという間に惹き込まれた。渦巻く陰謀、繰り広げられる策略、権力を持ってしまったカリスマ、政治家たち、テロリスト……どうなってしまうの? この日本は!
上下巻で、とても長い。登場人物も多くて、そして何より、登場人物に政治家が多かったりするから長くて、難しい……でも大丈夫! 最初に、登場人物一覧があるから、そこに戻ってみたりしながら読めば問題ない。

読みながらも、読み終わってからも、もし自分だったらHAVIを何歳になったら受けよう? いや、受けるのか? と考えてしまっていた。そして、つい友人と、「ねえ、あなただったら受ける? どう思う?」とか話し合いたくなる。

こんな未来、いつかやってくるのかもしれない。

文・こばやしいちこ
小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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