アトリエMの本棚 PR

村上龍映画小説集 / 村上 龍

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中かにおら、読者すすめの一冊をご紹介します。

村上龍映画小説集 / 村上 龍

ヤザキは、18歳の頃、九州の基地の街から上京し、東京で仲間数人と木造のボロアパートで一緒に暮らしていた。バンドを組み、東京でプロとして成功する、という目標を持っていた……のは仲間たちで、実はヤザキ自身はそんな情熱はなく、とにかくただ親元を離れたかっただけだった。大学に入るために予備校にはちゃんと行くという条件で上京し、仕送りを貰っていた。そして仲間数人と一緒に暮らしていたのも、自分で住むところを探したりするのが面倒くさかったから……と言う怠惰な理由だった。

そんな感じだから、仲間たちにもヤザキのやる気の無さは伝わった。夜の間はアルバイトをして、昼間は練習する仲間たちとは違って、アルバイトもせずにふらりふらりと暮らしているヤザキは、幾度かみんなとぶつかったあげく、ボロアパートを出て1人で暮らすことになる。

そんなヤザキは『美術学校』という一風変わった学校に入学する。入学試験などはなく、先着順に入れると言う、ある意味、ヤザキにぴったりの学校だ。でもまあ、親との約束はきちんと果たしたわけだ。結局、すぐに行かなくなってしまうのだが……

上京したヤザキ青年は、仲間とも別れ、なぜ選んだのか自分でもよくわからない美大に入りながら、結婚している年上の女性と付き合ったり、ありとあらゆる麻薬に手を出し、悪い友人や良い友人と出逢い、反道徳的な暮らしをしながら大人になっていく。出逢い、別れを繰り返した彼の身近に、映画だけはいつも存在した。そして大人になり、作家になったヤザキという人間を作り上げたモノの一部に、折々に観てきた映画たちも確実になっているはずだ。

私も、学生の頃からだいぶ映画を観てきた。今でこそ1人で観に行ったりもするが、当時はたいてい友人と観に行っていたので、その映画を大人になって観たり思い出したりした時に、あ、これはあの子と行ったな、こんなことあったな、話したな、と思い出したりするのも楽しい。

『K-20 怪人二十面相・伝』は、当時、何人かの友人に、「一緒に観よう」と誘われた。しかし、そう言いながら予定が合わなかったり、話が流れたり、上映終了になってしまうパターンもある。が、私はこの映画は、絶対観たかったから、当時としては珍しく1人で観に行ったのだ。すると、なぜか「一緒に観よう」と誘ってくれた友人と、行く話が実現し、1人で観ちゃった、とは言えずに、ないしょで3回観たことがある。

『デンジャラス・ビューティー』を観た時、私にはとても辛いことがあり、どん底だった。これはいつも元気づけてくれる友人と観たのだが、「もう、ココロの底から笑うのは無理かも……」なんて思っていたのに、気が付いたら爆笑していて、先日、数年ぶりに観たら、やっぱり面白くて、この映画ってすごい!と思った。

『レオン』は好きで、DVDも持っていて何回か観ているのだが、大人になって観た感想と、30年前に初めて観た感想は異なっていた。初めて観た時には感じなかった12歳の少女マチルダの『女』を感じてしまい、ざわりとした気持ちになり、それがまた面白いと思った(まあ、初めて観た時もいい大人ではあったのだけど)。

『ショコラ』を観るときには、レオニダスでチョコレートを買って映画館に行って、食べながら観たなぁ。いつもより大好きなチョコレートが美味しく感じたっけ。

また、何の映画を観たのか忘れたけれど、とにかくジョディ・フォスターが出ていた映画だ。映画館を出た後、なんだか無性にカフェラテが飲みたくなった。一緒に観た友人も。なぜだろう?と思ったら、当時、
「ジョディを見たら、カフェラッテ」
と言うマウントレーニアのカフェラテのCMがテレビでやたら流れている時期だった。「そのせいかー!」と友人と笑ったのを思い出した。

きっとこれからも私は映画をたくさん観るだろうし、思い出も増えるだろう。そしてそれが私と言う人間を形作っていってくれることだろう。

とりあえず最新の映画の思い出は、甥姪孝行で行った『インサイド・ヘッド2』。隣の席の姪っ子が、ガタガタムズムズ動いて不愉快だった、などという、あまり良い思い出ではないけれど。

文と写真・こばやしいちこ

小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

★このページでご紹介しているシルバーアクセサリーやポーチはアトリエM&Mでお求めいただけます。

アトリエMの本棚で紹介した作品を表紙一覧でご覧いただけます
atelier-m-bookの本棚 (atelier-m-book) - ブクログ (booklog.jp)