アトリエM_こばやしいちこによるオリジナルブックレビュー。たくさん読んだ本の中かにおら、読者すすめの一冊をご紹介します。
駅物語 / 朱野 帰子
東本州旅客鉄道株式会社、通称東本鉄に入社した若菜直は、東京駅に配属された。素人でもわかる。新人にはかなり大変そうな大きな駅に。でもこれは彼女の希望通りの配属だ。なぜなら、直が東京駅で働きたい、いや、働かなくてはならないのには、かつて自分が東京駅で助けてもらった5人の人を探して恩返しをする、という理由があったからだ。
人探しをするが、しかし、何はともあれ、お仕事だ。新人駅員だ。大忙しの東京駅。たった一人の同期である犬塚は、鉄道には随分と詳しいようだが、直に心を許す気はなさそうで、あからさまな敵意の様なものを感じる。なにやら仲良くなれそうな予感がしない・・・直の教育係として任命された先輩駅員の藤原は、ヤンキーまがいの口調で、
「緊急時は非常停止ボタン。間に合わなければ走れ。路線に落ちたら退避スペースに入れ。」
これだけ覚えておけ。以上。とばかりに、ろくに口もきいてくれない。こちらとも、仲良くなれそうな予感は皆無。ただ、藤原先輩が最初に教えてくれたこのことは、あとあと、直の命を救う。先輩は、後輩に、とっても大切なことを最初に教えてくれたわけだ。
それから、副駅長の吉住は、優秀な成績で入社した優等生の直に対して勝手に勘違いのシンパシーを感じてくださっていて、どうやらお気に召している様子。
他にも、クセ強めのつかみどころのない先輩、不思議な仙人のような老駅員、過去に何かあったような上司などに揉まれながら、仕事と、5人の恩人探しをする直。1日に100万人以上が利用している場所で、5人の人を探すのは、考えただけで気が遠くなりそう・・・しかもそれだけでなく、厄介ごとが山ほど舞い込んでくる。
しかし、徐々に関係性が変って来る同期や、仲間駅員たち、また、会社の垣根を超えた他会社の鉄道の駅員たちの協力で、さまざまな事件を解決して、くじけそうな仲間を励まし、励まされ、直たち新人駅員は、駅員として成長していくのだ。
この本を読むと、電車の遅延や何かで駅員さんを責めたり怒ったりしている人を本気でいさめたくなる。もとから駅員さんは何も悪くないしね。
あの駅員さんも、この駅員さんも……いろんなドラマがあって、と、駅員さんを見る目がちょっと変わった。先日、東京駅に行ったので、駅員さんに注目して見よう♪ と思っていたら、まあ、すごい人。ひとひとひと。外国の方たちがわんさかわんさか。いや、日本に来てくれるのはありがたいけれど、本当に人が多すぎて、駅員さんを見つけるのが大変! しかし、東京で1日の利用者数が多い駅ランキングを調べたら、私は勝手に1位が東京駅だと思ってたら、違うんだね。
1位 新宿駅
2位 渋谷駅
3位 池袋駅
4位 北千住駅
5位 東京駅
このような結果が。私にとっては、意外な5位だった。
とても面白い本だった。ドラマとか映画にしたらすごくいいのに、と思わせる。他社の鉄道会社との連携プレー、胸アツのシーンとか、すごくいいし、絶対に使いたいかっこいいセリフもある。ああ、あのセリフを言ってみたい。ここで書きたい。でも読むかもしれない人のために、それはやめておく。
東京駅をロケ地にした映画を作るのは、さすがに無理かあ~……と、素人ながら考え、残念ながら勝手にあきらめたのデシタ。