日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
実家にゴーヤーの苗をおすそ分けした時にもらったのは、稲庭うどん。
「これくらいしかなかったから」
と言われたけれど、メン食いな私にとっては、うひゃひゃひゃひゃである。
これをわが家では、わらしべ案件と呼んでいる。
父の出身地が秋田県なので、私は昔からうどんと言えば稲庭うどんだった。
それは後に結構ぜいたくなことだと知った。
父は今も、親戚から定期的に稲庭うどんを仕入れる。
お使い物にすると、喜ばれるからそれが定番になっている。
日本全国、うどんの産地がたくさんあるので、わが町のうどんこそが一番うまい!
と思っている人は多いだろう。
育ったところの味がうまいのは間違いない。
地元の味、食材があるっていいなぁと今でも思う。
稲庭うどんは、のど越しがつるりんとしていて、食べると気持ちがいい。
茹で時間が短いのも簡単でいい。
幼い頃、わが家で食べていた稲庭うどんは、端っこだった。
大きな声では言えないが、その形状が稲庭うどんだと、結構大きくなるまで思っていたほどだ。
お使い物には長いうどんを、家庭用には端っこを食べていたということだ。
この端っこがなんともおいしい。
2~3㎝の長さのうどんを湯がいて、それを穴あきおたまですくってつゆに入れて食べる。
ベロンと幅が広めのがあったりして、食感がランダムなのも美味しい理由だった。
端っこはつまり、くずっこ。
食べる時の音は、ツルツルというよりペロペロという感じ。
もう何十年も食べていないが、あののどごしや食感は鮮明に記憶している。
私のメン食い好きの始まりがあの食感にあるのだ。
ちなみに、端は端でも干すときの曲がりの部分だけを集めたものが「かんざし」として
売られているが、これは限定品としてちゃんとブランド化されている。
ちなみに、秋田出身の父は蕎麦が好きだ。
蕎麦かうどんか選べる時は、必ず蕎麦を選ぶ。
たしか一度聞いてみたことがある。「うどんより蕎麦が好きなの?」
「うどんは家にいくらでもあったから、外でわざわざ食べるものとは思えない」
というのが父の答えだった。
いつでも家で食べられるうどんが「稲庭うどん」だというのだから、
なんとも贅沢な話だ。