日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッセイ、つまりクリッセイ。
高校生からのつきあいの友人との山梨旅を短期集中連載。昭和レトロ感のある温泉宿でいいお風呂と美味しい夕食に舌鼓を打ったという話が前回。
たった一泊、されど一泊。今回もリュックとサブバッグ、その中にエコバッグも忍ばせて、極力軽装で出かけた。
前日までの天気予報では雨だったけれど、翌朝、チェックアウトする頃はまだ雨は降っていなかった。駅まで歩いて今日の目的地までの交通手段を選ぼうということになった。
地図を見ながら歩き始めるとすぐ近くにあった笛吹みんなの広場の横を通った。
日曜の午前中、広場ではふれあいマーケットなるものが開催中。
友人の「ちょっとのぞいていい?」というリクエストに、「もちろん」と立ち寄る。
地元の方が出展しているいわゆる朝市みたいなマーケットは、芝生の広場に結構な数のテントが張られていた。
パンやスイーツ、多肉植物、整体や占い、アクセサリーなど、店の種類はいろいろ。
ふんわりした雰囲気で、ガツガツ呼び込まれない感じが良かった。
気になるのはなんとなく、瓶詰のもの。ピクルスとかオリーブとか、ジャムとかね。
でも、でも、私たちは旅の途中。荷物が重くならないよう、昨日もワインを買うのをなんとか我慢? していた私は、「瓶ものは危険」と呪文のようにつぶやいていた。
しかし、数分後にそれは呆気なく破られる。
「すもものジャムだって!」
私たちが立ち寄ったテントは、地域連携・障がい者雇用の活動をしているHATARAKU LAB.さんのところ。
県内で収穫されたすももで作られたジャムだそうで、品種の異なる3種のすももジャムを販売していた。
小さなスプーンで味見をさせていただけるという。
品種によって、甘みが強め、酸味がある、バランスがいいなど特徴を丁寧に説明していただき、どれも美味しい。
いちじく好きの私は、杏やすももにも弱い。というか、好き。
3種目に味見させてもらった貴陽という種類が味も香りもバランスも最高。
友人は早々に購入を決めた。
あまのじゃくな私は、違う品種を……と考えた。
注文すると、リストに記録をする係の人がいて、すごく丁寧に懸命にしているのを見て、
さっきは貴陽で、今度は太陽みたいに、違う方がいいかな、なんてこともひっそり勝手に考えた。
ほんの数秒のことだ。
で、結果「私も貴陽をください」
結局瓶ものを朝イチの朝市で買ってしまった。でも、この甘酸っぱさは家族も好みに違いない。
いいものが買えたぞとホクホクした。
代金を渡すとテントの中のお姉さんが「お荷物になりますけど、良かったらお持ちください」とすすめてくれたのが、じゃがいもor里芋。ホクホク系のおまけというわけ。
おそらく畑で栽培する中で収穫した、もしくは小ぶりだったので早めに間引いたおいもちゃんだったのかもしれない。
友人はじゃがいもを、私は里芋をありがたくちょうだいした。
瓶ものに加え、おいもちゃん。
私のバッグにずしりと重みが加わったけど、気持ちはなんだかホックホク。
ちなみに、後日食べたその里芋は、本当にホックホクでいいお味だった。
もっと細かい部分で言うと、購入したジャムについての説明書きがついていたのだが、
これがとてもていねい。
そこには無添加・無着色のジャムであることが記されていて、
パンやスコーンに塗る以外のいろいろな食べ方が書かれていた。
その項目数、実に10項目。
・温かい紅茶にひとさじ垂らして とか
・カレーに混ぜて とか(カレーに混ぜるのもったいないよ)
☆印の後ろには、瓶に残ったわずかなジャムは……という最後まで余すところなく食べるちょっとしたアイデアも記されている。
そんなこと知ってるわ! と思う人もいるかもしれないし、
10個も例を書くのって多すぎない? みたいに感じる人ももしかしたらいるかもしれない。
でもそのA6サイズの紙に印刷された情報から、このジャムが丁寧に作られたもので、
だから愛情をもって食して欲しいという思いが詰まっている気がして仕方ない。
荷物が重かったのは、こういう思いも詰まっていたからかな。(いや、それは関係ない)
予報通り天気が悪かったら、タクシーを呼んでしまったかもしれない。
その日、その時間、雨は降っていなかったことで出会えた味と思いに触れられたのだと思うと、たぶん私たちはいろいろ味方につけたね、なんてうれしくなった。
山梨1泊旅。その後に訪れる場所でも、楽しいことやいい気分がまだまだ待っていた。
(つづく)